誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見る一人だ。そんな須藤氏が、万馬券ゲットのために、大活躍中のフランスからの騎手クリストフ・ルメールについて研究。今回は乗り換わり後に、一度も戻ってこない「乗り捨て」に注目して分析、馬券購入を実践した結果についてお届けする。
* * *
新馬戦でルメールが跨ったが勝てず、乗り替わりがあり、いろいろあった末にルメールに戻ってくる。これを「戻りルメール」と命名したのだった。
そのあとでまた乗り替わっても、一度戻ればOKとした。名手がふたたび手綱を取るくらいだから見込みアリ。経験を積んでたくましくなっているはずだ。戻りルメールは馬券的に美味しいのではないか、という仮説である。
戻る時間も要るだろうから、少し前のデータを調べてみた。2017、2018年のルメール騎乗の新馬戦は157鞍。105鞍は勝てなかった。このうち戻りルメールは10頭、不漁である。
数少ない中にタイミングのいいのがいた。データ確認の直後、2頭出走したのだった。
メッシーナは新馬3着、2戦目に戸崎で勝った。その後も戸崎で2勝目を挙げ、10戦目でルメールに戻った。このときは1番人気で12着。そして手の合う戸崎の手綱で(戻り戸崎か?)この日を迎えたのだ。東京の特別戦、9頭立て4番人気。1人の馬にはルメールが跨る。ここは恩返しの気合いだろう。だが勝ったのはルメールの馬。メッシーナはコンマ1秒差の3着だった。
その日の東京メインに出たのはレティキュール。新馬、2戦目ともに2着で乗り替わり、川田で2勝。「戻りルメール」で4着2回。その後は池添で3勝目をあげ、今回は菅原明のテン乗りである。ここでも1人にルメールが乗る。結果はコンマ2秒差の3着。やはりルメールの馬が勝った。御大、きびしく立ちはだかる。
さて、次の週の特別戦。ドリームスピリット(6歳牡馬)は29戦目にしてルメール鞍上(4人)で3勝目をあげた。これぞ戻りルメール勝ち。戦歴を見ると、新馬は担わなかったものの、7走目に初勝利を演出。その後1度乗っただけで実に2年半ぶりの騎乗。これには気づかなかったな。