ライフ

KeMCo【1】源氏物語の絵巻物に壇蜜「センセーショナルだったでしょうね」

伝岩佐又兵衛筆『朧月夜内侍図』江戸時代前期(17世紀)※現在はオンライン展覧会にて公開

伝岩佐又兵衛筆『朧月夜内侍図』江戸時代前期(17世紀)※現在はオンライン展覧会にて公開

 日本美術応援団団長である美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都港区の慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)の第1回。日本の古典文学や文字文化に関係の深い美術作品を考察した。

壇蜜:源氏物語の一幕を描く『朧月夜内侍図』は光源氏が朧月夜内侍を抱き寄せて寝殿へ入り、ふたりの濃密な関係が想像できます。

山下:この劇的な図様は岩佐又兵衛が生み、源氏絵に新風を吹き込みました。

壇蜜:江戸時代では過激でセンセーショナルだったでしょうね。なぜ、《伝岩佐又兵衛筆》なのでしょうか。

山下:又兵衛制作の旧金谷屏風『花宴図』(所在不明)と人物の輪郭線が一致するものの、彼特有のぞっとするような描線の力強さが足りない。おそらく写しと思われますが、又兵衛の研究における重要な資料です。

壇蜜:『三十六歌仙図屏風』は歌仙絵に和歌が書き込まれ、筆文字も際立ちます。

山下:文字文化の恒久の保存と継承のため設立されたセンチュリー文化財団の名品です。その貴重なコレクションが全件寄贈されて慶應義塾の文化財に加わり、収蔵・展示の場となる慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)が今春オープンしました。

壇蜜:よく見ると衣の色柄が一部剥がれていますね。

山下:他にも剥落模写の部分があることから原本が存在したと推測され、KeMCoでの研究が待たれます。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)
【開館時間】展覧会により異なる
【休館日】土、日、祝
【入館料】無料
【住所】東京都港区三田2-15-45 ※開館情報はHPにて要確認

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年7月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン