昨今、さまざまなクイズ番組が話題を集めているが、その「基礎を作った」といわれるのが、大橋巨泉さん(享年82)が司会を務めた『クイズダービー』である。巨泉さんが亡くなって5年となる今、後のクイズ番組を変えていったという『クイズダービー』の凄さについてコラムニストのペリー荻野さんが振り返る。
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7月12日に没後5年となる大橋巨泉さんの代表番組『クイズダービー』が、TBSチャンネル2で再放送されている。
すぐにネタが古くなるクイズ番組の再放送は少ないし、1976年から1992年まで放送された古い番組である。しかし、今、見ても十分面白い。そしてよく見ると、この番組が、後のクイズ番組を変えていったということがよくわかる。
『クイズダービー』は、クイズに競馬のギャンブル要素を取り入れ、二人一組の出場者は直接クイズに答えることなく、競走馬に見立てた五人の回答者から正解を出しそうな人を選んで持ち点3000点を賭けていく。回答者には、それぞれ独自の倍率(オッズ)がついていて、めったに当たらない回答者には最後の問題で20倍くらいの倍率もつくため、大逆転も可能にした。出場者は得点の分の現金を上限10万円まで受け取ることができる。
こういう娯楽性も新しかったが、注目したいのは、回答者の個性を引き出し、キャラクター定着化させ、視聴者に愛されるよう司会者が語りかけたことだ。
体から水分が出ないほど減量をしたボクサーが、もっと減らしたいときにすることを問われたクイズで、自信満々に「献血」と書いた1枠の篠沢秀夫教授、「歌う」と書いて自分で笑い転げる2枠の井森美幸。彼らは「珍回答」を連発し、観客や視聴者を大いに笑わせた。正解しないこと、トンチンカンな答えは番組的にプラスになる。これは大きな「発見」だった。
後にフジテレビで『平成教育委員会』で日本三景を答える問題で「小椋佳、谷啓、真梨邑ケイ」と応えた渡嘉敷勝男(『クイズダービー』には出場者として出て10万点を獲得したことがある)や『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジテレビ系)のおバカキャラの活躍、現在も特番で引き継がれる『さんまのSUPERからくりTV』(TBS系)のご長寿早押しクイズコーナーなどは、たったひとつの正解より予想もつかないたくさんの誤答のほうが面白いということを見せつけたのだった。