いまやタワーマンションは都心部に限らず全国各地にそびえたっているが、近年目立ってきたのが、新幹線駅から見える「駅弁タワマン」だ。果たしてどんな人たちが購入しているのか──。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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昭和に生まれて、今は使われなくなった言葉に「駅弁大学」というのがある。
1949(昭和24)年5月に設置された新制国立大学を揶揄した言い方だという。当時、国鉄(現JR)の急行列車が停車する駅では駅弁が売られていたが、それくらいの規模の街には新しい総合大学があるという意味だという。昭和の中期に活躍したジャーナリストであり、ノンフィクション作家の大宅壮一氏が造り出した言葉であると言われている。
今は新幹線の時代である。北海道から鹿児島まで総延長距離は約3000km、全国に109の駅がある。
「駅弁タワマン」は高値でも売れる
数えたわけではないが、109駅の中の多くには駅前エリアにタワーマンションがある。今はなくても、そのうちできる所もあるだろう。少なくとも、事業用地さえ確保できればどこかのデベロッパーがタワマンを建てるはずだ。
なぜ新幹線の停まる駅前エリアにタワマンが多いのか。売れるからである。それも、かなりの高値で売れる。少なくとも、東京の準郊外エリアの普通のマンションの価格レベルでは売れる。具体的な数字を挙げるなら、坪単価200万円台の後半から300万円。場所によっては、それより高くても売れるはずだ。
なぜ高くても売れるのか。もちろん買う人がいるからである。いわゆる新幹線の「駅弁タワマン」を喜んで買う需要層は歴然と存在するのだ。
地元名士や開業医の「セカンドハウス」に
では、誰が買っているのか。筆者の知る限り、地元の名士や開業医などが多い。彼らのほとんどは、そのタワマンを住むために買うのではない。少なくとも、本人が住むために購入しているケースは少ないと思う。
子どもなど家族に住まわせているケースもあるだろう。しかし、いちばん多いと思われるのは、セカンドハウスとしての購入ではないか。
駅弁タワマンを喜んで買う人というのは、少なからず東京志向である。何かというと東京へ来たがる。そのための中継地として駅弁タワマンを買っているのかもしれない。「東京へ行くことが多いから」というのは、家族や友人たちに対して駅弁タワマンを買う理由としては説明しやすい。