大規模会場や職場、大学などでの、新型コロナウイルスのワクチン接種が広まっている。最近はワクチン接種者向けのサービスも登場している。
競うように「ワクチン特典」に力を入れ始めているのが、飲食店同様、コロナで大打撃を受けたホテルや旅館だ。しかも、ホテル評論家で旅行作家の瀧澤信秋さんによれば、“いまは歴史上、最もホテルや旅館が清潔で居心地がいいとき”だという。
「かつてない新型コロナの脅威により、ホテル業界は1年以上にわたって消毒、清掃、感染症対策を徹底してきました。清潔さにかけて、スタッフはもう“ベテラン”の域に達しています。安心して利用できるうえ、さまざまな特典が用意されているいまは快適なホテルステイをする大チャンスといえるでしょう」(瀧澤さん・以下同)
瀧澤さんが注目するのは大規模接種センターなど遠方でワクチン接種を受けるために宿泊を予定する利用者向けの特典だ。
「主に『館内利用券付き』『送迎付き』『滞在時間の長期化』の3パターンです。特に滞在時間の長さは要チェック。ホテルは普段なら15時チェックイン、翌朝11時チェックアウトというパターンが多いですが、ワクチン接種特典では24時間滞在が当たり前。例えば三井ガーデンホテルズは30時間滞在できるプランを打ち出しており、接種した日の朝からチェックインして翌日のお昼過ぎまでゆっくり休むことができます。ホテルフクラシア大阪ベイのように、50時間滞在OKという驚くべき特典もある」
すでに接種を終えた人向けの割引サービスも全国で広がり始めている。
「私が接種後に行きたいと思っているのは、普段からよく利用している全国チェーン『ベッセルホテルズ』。リーズナブルかつ朝食も豪華でリゾートホテルのような施設もあります。接種者を対象として宿泊代15%オフプランを出しており、お得といえます」
「リーガロイヤルホテル」や「雲仙温泉 東園」「都ホテル」などいわゆる“ハイクラス”とうたわれるホテルや旅館も、軒並みワクチン特典を取り入れている。大阪府在住の坂上たき子さん(仮名・81才)は友人との再会を「リーガロイヤルホテル大阪」で豪勢に祝ったという。
「10年前に夫を亡くした後も、友達とのランチや夕食で楽しく過ごしていました。ところがコロナの影響で友達が外出の自粛を始めたため、一日中誰とも話さないこともあるような寂しい日々。正直、私はワクチンを打つことには消極的だったんですが、友達に“ワクチンを打って食事に行きましょうよ”と言われて、それなら接種しよう、と(笑い)。
久々のご飯は豪華にということで、リーガロイヤルホテル大阪のレストランへ。普段はハードルが高いし、家からのアクセスもさほどよくないので行けないけれど、“10%オフ”のいまがチャンスと思ってぜいたくしました。おいしかったし、やっぱり友達とのおしゃべりはすごく楽しかったです」(坂上さん)
坂上さんのような“ご褒美利用”を楽しむ人は多い。「ホテルニューオータニ幕張」の担当者はこう明かす。
「接種を終えた年配のご両親の慰労のためにと、お嬢さまがお食事に招待されたケースがありました。接種した人と同伴者全員分の館内レストランでの飲食代が10%オフになる特典を提供しているため、ご夫婦やご家族でのご利用が増えています」