弱冠24歳にしてラーメン店を3つ経営する梅澤愛優香さんは、かつてAKB48の派生ユニット「バイトAKB」のメンバーとして活動していた異色の経歴の持ち主だ。小さな頃から料理とラーメンが大好きだった彼女は、2015年2月にバイトAKBが活動終了した後、趣味でラーメンづくりを始めた。自宅のキッチンで試行錯誤するうちに「ここまで腕を上げたのだから、自作のラーメンを大勢の人に食べてほしい」という気持ちが高まり、2017年、地元の神奈川県大和市にて「麺匠八雲」をオープンするに至った。他店での修行経験もないまま人気店の経営者となれたのはなぜか。梅澤さんに話を聞いた。
経営に関してはド素人だったものの、今では「ラーメン界の女王」と称されるまでになった梅澤さんは、「経営に関しては、小さな努力のおかげか、コロナ禍までピンチを感じたことはないかもしれません」と語る。
「経営についてはビジネスや飲食の知見があるスタッフたちに恵まれたことが大きいと思います。なので、私自身は『少しでも良いものをお客様にお出しする』という一心で、ここまでやってきました」(梅澤さん、以下同)
経営するどの店舗でも意識しているポイントのひとつが、「女性ひとりでも足を運びやすいお店」ということだ。女性客にも愛されるラーメン屋の秘訣は、空間づくりにあると考えている。「厨房からの視線を気にせず、落ち着いてラーメンを味わってほしい」という思いから、「麺匠八雲」では厨房と客席の間にすりガラスを設置した。内装にもこだわった店内は、ラーメン屋というより、カウンターの小料理屋のイメージに近いかもしれない。
ラーメンを食べる体験を五感で感じてもらえるようにトータルでプロデュースする——。そんな梅澤さんの思想の集大成とも言えるのが、昨年8月に北鎌倉(神奈川県)にてグランドオープンした「沙羅善」だ。同店は前日完全予約制を取っており、まるで高級料亭のような落ち着いた空間とおもてなしで、こだわりのつけ麺をゆったり楽しむことができる。
「まずは食前に手作りのぶどうジュースとおぼろ豆腐をお出しして、つけ麺の素材などについて私からご説明した上でお客様に召し上がっていただく流れなので、お客様にはよく『料亭みたいだ』とおっしゃっていただけます。食器は、職人さんにオーダーしたオリジナルのものを使っています。せっかく人生の大事な1食に当店を選んでいただけたのですから、お客様にスペシャルな時間を提供するべく、細部まで徹底してこだわりました」