東京五輪の開幕が近づくにつれ、「オリンピックファミリー」という言葉がニュースにたびたびのぼるようになった。当初はオリンピック運動を推進し、関係する組織団体など全体を指す言葉だったらしい「オリンピックファミリー」だが、今では国際オリンピック委員会(IOC)の特権をふるう役員たちや、協賛するスポンサーたちのことと受け取られている。俳人で著作家の日野百草氏が、お客さんとしてオリンピックファミリーにたびたび遭遇するというタクシー運転手に、五輪を迎える心境をきいた。
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「オリンピックファミリー、最近よく乗せますよ」
4度目の緊急事態宣言が決まった雨の東京、神田駅近く、個人タクシーを拾いしばし雑談。初老の運転手がオリンピックファミリーを何度も乗せたと語る。
「昨日の夜は外人さんを2人、六本木ですね。あと銀座に1人」
オリンピックファミリー、こうして聞くとなんだかマフィアとか秘密結社みたいだが、そもそも自分たちで名乗ったのだから凄い。
「コロナの前は(インバウンドで)外人さんなんて珍しくもなかったけど、最近は外人さん珍しいんで、ああオリンピックが始まるんだなという感じです」
一応、タクシー運転手にも守秘義務なるものは存在するので詳細な個人情報を話したりはしないが、運転手さんは雑談程度のよもやまなら大抵話してくれる。取材先では必ずタクシーに乗るが、それは思わぬ情報が聞けるからでもある。
「どこの国の人かわかりませんが、恰幅のいい人でした。選手ですかね」
さすがに選手ではないと思うし、彼らはむやみに都内を徘徊してはいないだろう(と信じたい)。乗せたのはオリンピックファミリーの中でも大会関係者、もしくは来日したスポンサー企業の関係者かもしれない。IOCは役員、選手や大会関係者で構成されるオリンピックファミリーにスポンサーも入ると明言している。
「あと先週は東京駅から豊洲の公園にも乗せましたよ。外人さんなんで選手村かと思ったらスルーでした」
ぐるり公園は以前から穴場で酒が飲めた。選手村とは豊洲大橋を挟んですぐの場所だ。
「羨ましいですね、日本人なら怒られるんでしょうね」」