「彼と会ったとき、『トレーニングも順調にやってます』とすごくいい笑顔で話してくれたのが印象的でした。ちょうどオフシーズンで日本に帰ってきていたときだから、2020年の12月頃です。その“状態のよさ”がいまの大活躍につながっていると思います」
“彼”とはいま間違いなく世界一有名な日本人であろう、大谷翔平(27才)その人だ。大谷を15才から取材してきたスポーツライターで『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』の著書もある佐々木亨さんは、満面の笑みでワールドワイドな活躍を祝福した。
4年前に海を渡った青年は、メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスに入団し、快進撃を続けている。前半戦だけで、打っては33本のホームランを量産し、松井秀喜のもつメジャーでの日本人シーズン最多本塁打を更新。投げてはメジャーの強打者を相手に4勝を挙げた(日本時間7月12日時点)。打者・投手の二刀流は世界中の人々の心をとらえて離さず、現地では活躍のたびに発せられる「Sho-Time」との掛け声が流行語になっている。
世界中の老若男女を虜にする27才の青年は、いかにして“大谷翔平”となったのか
けがやアクシデントを次のステップにする
《悪い時にどうするかが一番大事》《自分の中で課題を消化するのが野球の面白さなのだと思います》──これらは大谷が過去に失敗に直面した際に発した言葉の一部。失敗を受け止めつつも、それをすぐさま好転させようとする、前向きな姿勢がうかがえる。なぜ、そうも前向きになれるのか。
読み解くひとつのカギとなるのが、「グロースマインドセット」と呼ばれる心のあり方だ。『子育てベスト100』の著者で教育ジャーナリストの加藤紀子さんが解説する。
「これは、発達心理学の世界的な権威であるスタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授が提唱したもので、壁にぶつかったときにそれを挑戦や学びとして肯定的に受け止め、困難にも立ち向かえるしなやかな心を指します。
近年はビジネス界でも注目されており、“激変する世界の中で生き残るには、社内の人材にグロースマインドセットを浸透させることが最も重要”といわれています。失敗を恐れたり、困難にひるんだりすることなく、大舞台で伸び伸びとプレーする大谷選手は、典型的なグロースマインドセットの持ち主です」