さまざまな思いがよぎる五輪である。大人力について日々研究を重ねるコラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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山のような懸案と反対の声を振り払いつつ、東京オリンピック・パラリンピックが開催されようとしています。いざ始まったらどんな雰囲気になるのでしょうか。無事に最後まで行われたとしても、土壇場で中止という衝撃の展開になったとしても、間違いなく「歴史に残る五輪」にはなってくれます。せっかくなので、しっかり見届けましょう。
それはさておき政治の世界では、オリンピックよりひと足先に、姑息さを競う「コソクリンピック」が絶賛開催中です。常に開催されているとも言えますが、近づくオリンピックに敬意を表してでしょうか、ここ最近の盛り上がりっぷりはとくに目が離せません。独断で恐縮ではありますが、まずは決勝にエントリーされた選手をご紹介しましょう。
第1のコース、西村康稔経済再生担当相。酒の販売業者に対して、銀行などに「酒を出してる店に酒を売らないように圧力をかけろ」と“要請”した問題で、すっかり時の人になっています。批判を受けて「(融資を制限するといった趣旨ではなく)いろんな機会を通じて働きかけていただければということだ」と白々しく弁明しました。
また、東京都が月次支援金を申請する際の「誓約書」にも同様の脅しが盛り込まれた文言が残っていると、国会で野党議員が指摘。それに対して「都道府県の様々な判断で色々な措置が取られているが、初めて見た」と、さも東京都が勝手にやったことのように答えました。しかし、もともとは国が6月に依頼したことであり、本当に知らなかったとしたら無責任だし、知っていてそう言ったとしたら念入りに姑息です。
第2のコース、菅義偉首相。上の「要請問題」の騒ぎが大きくなって、西村大臣の発言について尋ねられた菅首相は、最初は「承知していない」と冷たく突き放します。しかし、事前に菅首相も出席していた打ち合わせで、「飲食店対策のための関係機関として金融機関」と書かれた資料が配られ、説明もされていたことがバレてしまいました。
それが明らかになると「具体的な内容について議論はしてはいない」と、本人や周囲の説明が変わります。ということは、議論するまでもなく「それはいいね」という気持ちで賛成したと言えなくもありません。そもそもトップとして「私は知らなかった」は言ってはいけないセリフですが、姑息にお座なりな謝罪で済ませようとしています。
東京五輪に関しても、記者会見などで何を聞かれても「全人類の努力と英知で難局を乗り越えていけることを東京から発信したい」「安心安全な大会を成功させ、歴史に残る大会を実現したい」と抽象的な決意を述べるばかりで、具体的に何をどうするのかは頑として答えません。なかなか筋金入りの姑息っぷりです。
第3のコース、麻生太郎財務大臣。「要請問題」への批判が高まったあとで、麻生大臣は「途中段階の報告は受けていましたよ。私の方は何か違うんじゃないかと思ったけど、放っておけ。そういうものは放っておけばいいんだ」と発言しました。結局は容認したわけですが、自分に責任はないと強調しているじつに姑息な態度です。