人の印象に残るプレゼンテーションだけは巧みだが、検証すると中身がなかったり、成果がまったく上がらないというプロジェクトがある。最近は、その規模が大きく、数も増えてきたような気がするが、鉄道にまつわる開発にも同じようなことが起きている。ライターの小川裕夫氏が、2025年大阪万博会場となる人工島「夢洲」での鉄道駅開発をめぐるプロジェクトについてレポートする。
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羽田空港と浜松町を結ぶ東京モノレールや東海道新幹線開業は、1964年の東京五輪に合わせたインフラ開発だったとよく言われる。大規模な国際イベントを契機に地域を開発しようという機運は現在も続いており、2020東京五輪にあわせて様々なプロジェクトが進められた。東京五輪の次の巨大イベントといえば、大阪府大阪市が開催を予定している2025年の万国博覧会だろう。
2025年大阪万博の開催エリアとなる夢洲(ゆめしま)は、ゴミの最終処分場として埋め立てられた人工島。住所で言えば大阪市此花区となるが、一般的には、USJの近くにあると言った方がわかりやすいかもしれない。
夢洲はゴミによって埋め立てられたため、現在のところ建物をはじめ水道・ガス・電気といったインフラ整備は進んでいるとは言い難い。だが、まったく見過ごされた場所というわけではなかった。
夢洲は約390ヘクタールという広大な面積を有する。しかも大阪の中心部から遠いわけではないため、未整備のままでは宝の持ち腐れになる。万博と合わせて整備し、その後の都市開発につなげようという機運が出てくるのは自然な話だった。
大阪市営地下鉄を民営化して発足した大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、2018年11月に夢洲開発の目玉として夢洲駅タワービルの建設計画を策定。発表直後、大阪市の吉村洋文市長(当時)は、夢洲駅タワービルについて誇らしげにツイートした。天高くそびえる駅ビルは近未来的なデザインだったこともあり、テレビ・新聞各社にも大きく取り上げられる。
しかし、夢洲駅タワービルの計画は、すぐに撤回された。なぜか?
IR誘致の不調が夢洲開発に影を落とす
「夢洲駅タワービルを実現するためには、2つの条件が前提になっていました。ひとつは、収益の見込みが立つこと。もうひとつは、土地が確保できることです」と説明するのは、大阪メトロ広報課の担当者だ。
万博会場に予定されている夢洲は、今のところ広大な空き地が広がるばかりということもあり、鉄道などの交通機関は整備されていない。だが、万博開催に合わせて必要になる見込みができたため、鉄道の整備計画が立てられた。
現在、夢洲については、大阪メトロの中央線延伸計画をはじめ、近鉄の相互乗り入れや京阪の延伸など複数の計画が検討されている。しかし、いくつかの路線は万博開催までの実現は難しそうだ。