夏の甲子園で全国屈指の強豪といえば、神奈川の東海大相模の名が必ず挙がるが、同校を長年率いてきた名将、門馬敬治監督(51)が今夏限りで退任する。いったい門馬氏とはどんな監督だったのか。『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』(インプレス)などの著書があるスポーツライターの大利実氏が、過去の取材エピソードを交えて振り返る。
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7月1日の朝、衝撃的なニュースが飛び込んできた。東海大相模の硬式野球部を率いる門馬敬冶監督が、今夏限りで退任。「健康上の問題」が大きな理由だという。
1999年に監督に就いてから、今春センバツを含めて春夏4度(2000年春、2011年春、2015年夏、2021年春)の全国制覇を誇り、菅野智之(巨人)、田中広輔(広島)らプロ野球の世界で活躍する教え子も多い。同じ1969年生まれの大阪桐蔭・西谷浩一監督とともに、高校野球界をリードする指導者のひとりである。
「指導者の本気は伝わるからね」
2019年春以降、激戦区・神奈川で県内公式戦41連勝、6季連続優勝と圧倒的な強さを見せる。ライバル校の監督は、東海大相模を倒すためにさまざまな取り組みをしているが、それは、「打倒・相模=打倒・門馬監督」でもあった。
日大藤沢の山本秀明監督(元中日・山本昌氏の実弟)は、「ショック。本当にショックです……。門馬さんの最後の夏、絶対に東海大相模と戦いたい」と口にする。2019年夏は決勝でぶつかるも、1対24とすさまじい攻撃力を見せつけられた。
「能力の高い選手が練習によってさらに成長しているのが、相模の強さ。特に、投手対打者の1対1になったときに芯の強さを感じます」
今春3回戦、延長で惜敗した平塚学園・八木崇文監督は、「勝利への執念の差」と悔しさを滲ませた。チーム作りで悩んでいたときには、門馬監督から「指導者の本気は伝わるからね。監督が本気じゃないと、選手も本気にならないよ」と金言をもらったこともある。