連日繰り返される新型コロナや五輪関連のニュース。先の見通せない状況が続くなか、何が起きているかを理解するには関係者の「生の声」が欠かせないが、それらを伝える記事やニュースの中に、「政府高官」「自民党幹部」「政府関係者」といった匿名のコメントが多いことに気づく。
たとえば産経ニュース(7月9日付)では、東京五輪の財政負担について、「政府高官」が〈無観客と決めたのは都なのに、なんで支払いだけは国なんだ〉と不満をぶちまけ、AERA dot.(7月11日付)では、酒の取引停止要請をめぐる西村康稔・経済再生担当相の発言について、「自民党幹部」が〈菅首相はとりあえず、西村氏に責任を押し付けて乗り切るつもりなのでしょう〉と解説する。
私たちの暮らしに影響する重要なニュースに登場して、自説を展開する謎の「政府高官」や「自民党幹部」とは誰のことなのか。元テレビ朝日政治部記者で政治ジャーナリストの細川隆三氏が「必ずしも特定の人を指すわけではありませんが」と前置きして解説する。
「『政府高官』と言えば、昔は内閣官房長官や内閣官房副長官のことでしたが、いまは範囲が広くなり、総理に近い補佐官や省庁の幹部クラスを含むようになりました。たとえば外務省の事務次官は、本来は外務省首脳ですが、それでは誰が喋ったか特定されるので『政府高官』にする場合があります。
『自民党幹部』は通常、党4役(幹事長、総務会長、政調会長、選対委員長)プラス参議院議員会長、参議院幹事長を指します。副幹事長を含むかは微妙ですが、報道機関によっては自民党幹部とするところもあります。また最近ほとんど使われない『政府筋』は、以前は内閣官房副長官を指すことが通例でした。官房副長官として7人の首相に仕えた石原信雄さんの発言は、『政府筋のコメント』として新聞の一面を飾ることがあったほど。さらに『官邸筋』は、内閣官房副長官補を指すケースがよくみられます」(細川氏・以下同)
なぜ、わざわざ「隠語」のような言葉を用いて、発言者の実名を報じないのか。それは、これらの発言のほとんどが「オフレコ取材」によるものだからだ。