東京に4回目の緊急事態宣言が発令されるなか、東京五輪は「無観客」で強行開催される。政治家は国民に根拠なき楽観論を振りまいて開催へ“特攻”していった。
国民を危険に追い込んだ政治家と五輪貴族は、「祭が始まれば、そんな怒りなど忘れるさ」とタカをくくっている。だからこそ、その亡国の発言をきちんと記録しておかなければならない。
昨年3月24日、当時の安倍晋三・首相はトーマス・バッハIOC(国際オリンピック委員会)会長との会談で五輪の1年延期方針を決め、「人類が新型コロナに打ち勝った証として、完全な形で開催する」と語った。
小池百合子・東京都知事も言動の無責任さでは負けていない。昨年3月には安倍氏の「完全な形」発言を「ここは安倍総理の考え方と共通している」と支持していたが、感染拡大で旗色が悪くなると次々に責任転嫁発言を繰り出した。
東京が3回目の緊急事態宣言下にあった今年5月に米国政府が日本への渡航中止勧告を出すと、「アメリカの委員会が『東京オリンピック・パラリンピックについては問題ない』というメッセージを出していると聞いている」と米国五輪委員会の“お墨付き”を理由に開催は可能との見方を示した。
さらに、6月に政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂・会長ら専門家有志が「無観客開催が望ましい」と提言すると、政府に判断を丸投げするような次の発言をした。
「観客の上限は政府の方針に沿って決める」
その小池氏の後見人的存在の二階俊博・自民党幹事長も五輪を混乱させた。今年初めには、
「スポーツ振興を図ることは国民の健康にもつながる。『(五輪を)開催しない』という考えを聞いてみたいくらいだ」
「選手は観客がいたほうが良いに決まっている」
と言っていたかと思うと、4月の菅首相の訪米直前に「『これ以上、とても無理だ』ということであれば、すぱっとやめなければならない」と中止論をぶち上げ、その後も会場での酒の提供禁止や無観客開催に言及してきた。
一見、民意に敏感なように見えるが、「五輪に失敗したら菅首相だけに責任を負わせるための予防線。五輪を政局に利用している」(自民党ベテラン議員)との見方が有力だ。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号