「クールジャパン」を日本政府が唱え始めてはや10年。2010年に経済産業省が「クールジャパン戦略」を打ち出すと、アニメやゲーム、音楽などさまざまな日本のサブカルチャーが世界に出ていった。そうしたなか、最近では「中国人が生み出すクールジャパン」が人気を博している。中国のゲーム事情に詳しいMYC JAPAN代表の峰岸宏行氏に話を聞いた。さっそくだが、「中国人が生み出すクールジャパン」とは、どういうことか。
「『中国製日系ゲーム』と呼ばれるもので、中国企業が制作した日本風のゲームのことです。『アズールレーン』、『崩壊学園』、『原神』などが代表作で、スマートフォンやパソコンで遊べます」
ゲームに関心が薄い人にはピンとこないかも知れないが、街中にはこれらの作品の広告が溢れていて、知らず知らずのうちに目にしている。たとえば『アズールレーン』は昨年、歌手の西川貴教が“美少女化”してテレビCMに出演し話題をよんだ。JR山手線の車内ドア上広告では、同作のキャラクターがインタビュー番組のガイドとして登場している。
キャラクターのビジュアルやストーリー設定、広告展開などから「中国製日系ゲーム」は日本人に向けたゲームのように見えるが、日本は市場の一つにすぎず、アジアや欧米など全世界で展開されている。『原神』は昨年9月末にリリースされたが、米国のアプリ調査会社・App Annie社によると3か月連続でモバイルゲーム売上世界1位だったという。何も知らなければ日本のメーカーが作っているゲームが世界で流行っていると思ってしまうが、中国企業が“クールジャパン”を研究して開発しているのが実態だ。
「中国製日系ゲーム」の最大の特徴は、どの国でも日本人声優が起用されている点だ。海外のユーザーは、日本語の会話を意味が分からないながらも耳で聞き、表示された字幕を見て会話を理解する。目でセリフを追ってゲームを楽しむのである。なぜ中国企業はこのような仕様にしているのか。
「2013年に台湾のゲーム会社が制作した『幻想神域』という作品が、中国大陸でリリースされることになったのがきっかけです。リリース権を購入した中国の会社が一計を案じ、あえて日本人声優の声や日本人の作曲家による音楽を加えて、日本のゲームっぽく売り出した。これが中国で大成功したんです」