今夏クールの連続ドラマが軒並みスタートしたが、定番の刑事モノで注目を集めているのが、佐々木蔵之介主演の『IP~サイバー捜査班』(テレビ朝日系)だ。このドラマについてコラムニストのペリー荻野さんは「挑戦的」と評価する。その理由とは?
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医療ドラマに刑事ドラマ、編集者ドラマ、『孤独のグルメ』の新シーズンも含めて、おなじみ感のあるラインナップが揃った今シーズン。五輪中継が入って、視聴者の関心があっちこっちいきそうなこの時期、固定ファンを持つシリーズで手堅くドラマを見てもらおうということだろう。
そんな中、私が一番「挑戦的だ」と思ったのが、テレビ朝日系『IP~サイバー捜査班』である。
主人公は、京都府警の「サイバー総合事犯係」主任の安洛一誠(佐々木蔵之介)。サイバー捜査のスペシャリストである彼は、プロファイル担当の平塚係長(杉本哲太)、映像解析担当の川瀬(堀内敬子)、情報解析担当の岡林(吉村界人)らとともに専門分野を活かして、難事件に立ち向かう。
「立ち向かう」と書くと、京都の町を縦横無尽に駆け回るイメージになりそうだが、安洛は、ほとんど外に出ないインドア刑事。いつも作務衣のような青い上着を着て、課内に特設した(?)青一色の壁に行燈や壺などがある茶室のような謎の小部屋の畳にあぐらをかいて、考え事をしている。事件が起きると、各デスクのメンバーに指示を出し、解決の糸口を捕まえるのである。
その捕まえ方、専門用語はテロップで表示される。このあたりは、「科捜研の女」シリーズで「成傷器照合」「ALSによる遺留品鑑定」「足跡鑑定」「口唇紋鑑定」などと示されるのと同じだが、「IP」が違うのは、その過程のほとんどが「カタカタ」で進むこと。
先日の新妻失踪事件では、「スパイダーグラフで実態を可視化」と表示されてカタカタ…続いて「行方不明者に関するSNSアカウント検索」でカタカタ…「コミュニティサイトにおけるコネクト解析」カタカタ…「SNS投稿及びメール履歴の文書鑑定」カタカタ…みんなキーボードをたたきながら、捜査するのである。その結果、真相をつかんだ安洛は言う。
「すべてはwebの中にあった!」この決めセリフにも驚いたが、大詰めの場面で銃をかまえた犯人に安洛が「必死に耐えているのは、君も同じじゃないか」と説得したのが画面越しってところにも驚いた。刑事ドラマの定番シーンもリモートの時代なのである。