患者を服薬のストレスやリスクから解放する“断薬”。だが、「やめたいけど、なにをどうすればいいのか」と疑問を持つ患者は多いだろう。そこで今回は高血圧治療で使われる降圧剤について、「断薬に至るプロセス」を専門医に詳しく教えてもらった。
高血圧は“全身病”として知られ、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、狭心症など数多くの病気のリスクを高める。いざ、降圧剤をやめようと思っても躊躇してしまい、服用している人も少なくない。
しかし、徳島県の坂東ハートクリニックは、2003年の開院以来、数多くの患者を「脱・降圧剤」に導いてきた。坂東正章院長はこう言う。
「来院した患者から『降圧剤をやめたいのですが、何をすればいいか』と訊かれますが、まずは『正しく血圧を測ることが第一』と答えます。正しい計測法を知らなかったことで高血圧と診断され、不要な降圧剤を飲んでいる患者もいます」
自宅で計測した家庭血圧が実態に近い数値になるという。血圧計は上腕式を使用し、椅子に座った状態で、腕帯は心臓の高さにし、血圧計に正面を向いた無理のない姿勢で計測する。家庭計測のガイドラインには測定する時間帯も記載され、朝なら起床後1時間以内で排尿後、朝食前が条件とされている。
「よく訊かれるのが『起床1時間以内ならいつ測定してもいいのでしょうか』ということ。しかし、測定前に犬の散歩や庭の草抜き、朝食の用意など負荷のかかる作業をしたり、ニュースを見て腹を立てると血圧が変動します。毎日、同じ条件で計測することが大事なので、起床して排尿したら測るようにしましょう」
測定回数の質問も多いという。高血圧ガイドラインには「1日2回測定して平均を出す」「1回計測は高くても低くてもその値を記載」と定められている。
「家庭計測は長期間、同じ条件で測定しないと意味がないので、『1日何回測るべきですか』と訊かれた場合、患者の性格によって選択してもらっています。2回計測のほうがより確かな値になりますが、毎日継続できる人は限られます」
食生活の見直しも求められる
正しく血圧を測定できてから「脱・降圧剤」のアドバイスが始まる。
「『どれだけ血圧が下がったら降圧剤を減らせるか』と訊かれますが、患者ごとに目標は異なります。たとえば、家庭血圧が135/85未満が目標なら、上の血圧130未満が3日間続いたら薬を減らします。当然、自分で調整するのではなく主治医の判断に従ってください」