神がかり的な瞬間だった。7月10日の埼玉県川口市。歌手で俳優の美輪明宏(85才)が、講演会を終えてスタッフに手を支えられながら表に出てくると、それまで空を覆っていた黒い雨雲が流れていき、太陽の光が三輪を照らした。まるで、自然が作り出した舞台照明のよう。全身鮮やかな青の服で、より映えていた金髪のロングヘアが、黄金色に輝いていた。
かつては美輪の画像を携帯電話の待受画像にすると、「運気が上がる」と言われていた時代もあった。今回キャッチした輝く美輪の姿は、まさに「待受画像にしたい」一瞬だ。
近年は、一時期に比べるとテレビ出演がめっきり減っているが、まだまだ健在である。
2000年代に細木数子(83才)や江原啓之(56才)らとスピリチュアルの大ブームを巻き起こしたが、その江原とのトーク番組「オーラの泉」(テレビ朝日系)が2009年に終了すると、その年に主演した舞台中に右腕を粉砕骨折。一昨年の2019年9月には脳梗塞まで患っていた。
それでも、わずか2か月後にはラジオ番組で「不死鳥です」と、復活を宣言。講演会は、コロナ禍で中止になっていたが、昨年秋には再開。今年も、今月から待望の再々開をし始めたところだった。美輪を知る芸能関係者は「3月に旧知の友人黒柳徹子さん(87才)の『徹子の部屋』に出演しましたが、病の後遺症はなく、言葉もはっきりしていて、講演会は好評です」と話した。
ただ、昨年末にはバラエティー番組「ありえへん∞世界」(テレビ東京系)に出演して「昔は霊感があっていろいろなものが見えたり聴こえたりしたけど、最近はパタッと何も見えなくなった」と告白し、往年のファンを驚かせた。
ある民放のベテラン番組制作者は「昔は『オーラ』とか『スピリチュアル』『霊感』というワードがもてはやされて、番組も高視聴率が取れていました。しかし、反動で巷には自称霊媒師が一気に増えて、金銭的な被害も増えていくと、番組にも苦情が来るようになってしまった」と振り返った。
晩年は「前世や守護霊は科学で証明されたものではなく、人生をよりよく生きるヒントです」などと、注釈のテロップを入れるようになり、その手のバラエティー番組は、1つずつ終了していった。放送倫理の高まりとともに、淘汰される運命だった。