誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見る一人だ。そんな須藤氏が、万馬券ゲットのために、「夏は牝馬を狙え」など夏競馬の格言について検証した成果をお届けする。
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夏が来た。ついでにオリンピックも。昭和39年生まれにとっては2度目。それなりに感慨深いものの、大事なのは夏競馬である。毎年、ほぼ夏競馬で負けている。暑さで緊張感が途切れてしまうせいか、府中や中山ほど地方予想に腰が入らぬせいか。それじゃいかんのだ。夏競馬に集中!
常識を疑う新テーマである。格言は先人が導き出した経験値、世間知で、それを鵜呑みにするのはどうかと。競馬の予想はその瞬間そこにしかない唯一無二のもの。何もかもを自分で決めたい。
夏競馬の格言で有名なのは「夏は牝馬を狙え」、「夏はあし毛に妙味」、そして「夏場の体重増は買い」など。とりわけ最初の「夏は牝馬」は周知だろう。ちなみに藤沢和雄調教師は自著『GIの勝ち方』(小学館)で「平均して夏に強いのは牝馬だ。逆に牡馬は弱い。それは間違いない」と断じる。何につけても牝馬のほうが我慢強いからだと。名伯楽の断言、説得力があるなぁ。
高温多湿の日本の夏は疲弊することしきりだが、競走馬には悪いことばかりではない。発汗のおかげで筋肉がほぐれ、寒い時季よりも速く走れるという。ただし筋肉量の大きい牡馬は体内に熱が籠りやすく、睾丸が腫れあがる「夏負け」をしやすい。牝馬は体温調節に優れていて酷暑の影響を受けにくいのだ。じゃんじゃん汗をかいてぐびぐび水を飲むことで馬の体調は良くなる。さらに牝馬は発情期で戦闘能力が上がるなんて説もある。
また夏場は調教もソフトになりがちで、軽めの調整でもなんとか仕上がる牝馬が良く走るとも。もうひとつ、地方開催は平坦なコースも多いというファクトを踏まえ、「牝馬は牡馬にパワー負けしにくい」というものもある。
酷暑8月限定で、2016年までの5年間をさかのぼってデータを取った(JRA-VAN TARGET)。牡牝のレース1289回中、牝馬勝利は439回。その割合は.341。複勝率は.354。これが全月(1~12月)だと.245。複勝率は.252。牝馬、がんばっている。