学習図鑑に歴史あり。1956年から刊行が始まった「小学館の学習図鑑シリーズ」も、昔と今で見せ方が大きく変わっている。
たとえば1958年発行の『動物の図鑑』のパノラマ画は、この時代の図鑑でみられる代表的な表現方法。様々な種類の動物がこのような密度で同じ場所に勢揃いすることは現実ではあり得ないが、動物の行動や生活の様子がわかりやすく描かれ、読み手をワクワクさせる。
図鑑の編集に携わり、その歴史にも詳しい小学館の北川吉隆図鑑室長はこう語る。
「巻末のページにパノラマ画の動物の解説をまとめている点もこの時代の図鑑の特徴。“楽しみながら知る”という学習図鑑の思想が息づいています」
現在では各社の学習図鑑で売れ行きNo.1の『恐竜』だが、その歴史は意外と浅い。小学館では1990年、「小学館の学習百科図鑑シリーズ」の最終巻50巻で初登場。くしくも学習研究社からも同年に発行された。
「小学館の学習百科図鑑シリーズ」に載る恐竜が176種類だったのに対し、最新の「小学館の図鑑NEOシリーズ」では約400種類に大量増加。CGのイラストを使い、進化の様子がわかるように系統だって紹介されている。
1970年に刊行が始まった「なぜなに学習図鑑シリーズ」は学年誌の編集手法を取り入れた特異な図鑑だった。『からだのふしぎ』では「人間より、いるかのほうが頭がよいのですか」という質問に対し、1970年代のオカルトブームも影響してか、イルカが銃で人間を襲う過激なイラストを添えて回答。宇宙人や超能力も登場した。空想科学イラストで有名な小松崎茂が描き下ろすなど、斬新で豪華な内容から“伝説の図鑑”と位置づける人も多い。
学習図鑑に夢中になるのは子供だけではない。「小学館の図鑑NEO+ぷらすシリーズ」として2009(平成21)年に発行された『くらべる図鑑』は、身近なものから宇宙まであらゆるものを比較するコンセプトがうけ、“大人もはまる革命的な図鑑”として話題に。2020(令和2)年発行の同シリーズ『分解する図鑑』はテレビや自動販売機など身近な機械や道具の仕組みを「分解」という手法で解説。大人の知的好奇心も刺激し、ヒット中だ。
これら図鑑の中でしか見ることのできなかった生き物たちに出合い、その息吹を感じる──図鑑に入りこむようなデジタル体験型施設「ZUKAN MUSEUM GINZA」が東急プラザ銀座6階にオープンした。銀座の真ん中で大人も子供も夏休みを満喫してほしい。
●ZUKAN MUSEUM GINZA powered by 小学館の図鑑NEO
【住所】東京都中央区銀座5-2-1 東急プラザ銀座6階
【開館】11時~20時
【休館】東急プラザ銀座に準じる
【入場料】大人2500円、中学・高校生1700円、小学生1200円、未就学児(3歳以上)900円
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号