患者を服薬のストレスやリスクから解放する“断薬”。だが、「やめたいけど、なにをどうすればいいのか」と疑問を持つ患者は多いだろう。そこで今回は頭痛治療などで使われる鎮痛剤について、「断薬に至るプロセス」を専門医に詳しく教えてもらった。
一度、服用すると痛みが起きるたびについ手にしてしまう鎮痛剤。25年以上頭痛診療に携わってきた秋葉原駅クリニックの大和田潔院長は、多くの人を鎮痛剤の“依存”から卒業させてきた。
「来院した人の多くが、市販の鎮痛剤を服用していましたが、『どのくらい頭痛が続いたら病院に行くべきか』と迷っていました。頭痛は脳の酷使でも起きますが、薬の使い過ぎも慢性頭痛の原因になる。鎮痛剤は対症療法に過ぎません。
あくまで目安ですが、月に10回ほど鎮痛剤を服用しなければならない頭痛が起きているなら頭痛外来を受診すべきです」
入手しやすいからといって市販の鎮痛剤を飲み続けていると、別のリスクが懸念される。
「『昔から頭痛持ちの体質で、改善できないでしょうか』と相談されます。確かに疲労が頭痛に現われやすい人はいます。ただ、長年、市販薬を飲んでいる人は、薬が切れるとより強い痛みが起きるようになる『薬物誘発性頭痛』が起きている可能性もあります」
脱・鎮痛剤に向けた最初の一歩は「頭痛の原因を把握すること」と、大和田院長は言う。
「慢性頭痛には、脳血管の拡張による『片頭痛』や、肩こりなどによる『緊張型頭痛』などがあります。『自分はどちらが原因かわからない』と相談されますが、多くの場合、両方が混在しているので、痛みから判断は難しい。治療効果を相談して様子をみていきます」
大和田院長によると、慢性頭痛の大半は生活環境に原因があるが、「台風や低気圧が近づくと頭痛が起きて鎮痛剤を飲んでしまう」と外的要因を訴える相談も多いという。
「最近の研究では気圧の変化が頭痛に影響することには否定的なデータが多い。東京スカイツリーの展望台の気圧と、低気圧はいずれも980ヘクトパスカル前後ですが、展望台で頭痛が急に起きることはないでしょう。思い込みに引きずられて、脳の痛みを感じる閾値が下がり、痛みが出やすくなる」