女子ソフトボールの金メダルも、競泳・大橋悠依の二冠達成も、野球の侍ジャパン初戦のサヨナラ勝ちも、今大会の“歓喜の瞬間”の観客席に、自国開催の五輪を待ちわびていたファン姿はなかった。東京を中心に、コロナの感染「第5波」が到来しているなかにあって、それは当然の措置だろう。そうしたなか、首都圏以外に会場が設けられた競技の一部では、客席に観客の姿がある──。
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無観客開催を基本としている東京五輪にあって、自転車競技の行われている静岡県の「自転車の国 サイクルスポーツセンター」は数少ない有観客の会場だ。女子マウンテンバイク(MTB)のクロスカントリーが行われた7月27日、会場の伊豆MTBコースからほど近い修善寺の駅を降りると、そこには“オリンピック”が広がっていた。
チケットに当選・購入した家族連れやカップルが駅の構内にたむろし、ボランティアがよく通る声で伊豆MTBコースまでのシャトルバス乗り場を案内する。コロナ禍ではすっかり消えたメガイベント風景である。静岡県が設置したインフォメーションデスクにはプロモーションのパンフレットとともに、「コロナが収まったら、またゆっくり静岡にお越しください」の張り紙が貼られていた。バスに乗り込むとすぐに発車し、15分ほど揺られて会場へ。
手指の消毒と検温、手荷物検査を終えると、熱中症対策だろうかボランティアから塩飴と冷却タオルが手渡されていた。競技関係者や報道陣しかいない殺風景な他会場では見られない「おもてなし」だ。
台風8号の影響を受けて天気が心配されたこの日、競技開始の15時を前に雨はあがり、約3000人の観客がコース脇を固めていた。男子のクロスカントリーが行われた前日は3400人だった。大会関係者によるとチケットを購入して入場できた観客と、招待客の正確な人数は公表していないという。
だが、海外からの観客受け入れを見送ったがために、会場のキャパシティにはまだまだ余裕があった。「各競技場の定員50%以下(最大1万人)」の規定を守るために観客を減らす再抽選なども行わなかったというから、海外で人気の自転車競技であるがゆえに、もともと海外から来るファンを見込んで国内販売数は少なめに設定されていたのかもしれない。
それでもオフィシャルグッズショップには長い列ができ、この会場でしか手に入らないタオルや小物類は既に売り切れが続出していた。買ったばかりのアシックス社製の応援Tシャツを着てレースを見守る観客も大勢いた。