芸能

筒美京平さん作曲『木綿のハンカチーフ』 携帯があったら生まれなかった

太田裕美が『木綿のハンカチーフ』にまつわる思い出を語る

太田裕美が『木綿のハンカチーフ』にまつわる思い出を語る

 メジャーで活躍するミュージシャンによる一発撮りパフォーマンスを公開するYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で、2020年12月、女優の橋本愛による『木綿のハンカチーフ』のカバーが注目を集めた。これまでも多くのアーティストにカバーされてきた同曲のオリジナルは、2020年に亡くなった筒美京平さんが作曲し、1975年に太田裕美が歌ったもの。名曲の誕生にまつわる思い出と、筒美さんの曲について太田が語った。

 * * *
 デビュー曲の『雨だれ』(1974年)から代表曲の『木綿のハンカチーフ』(1975年)、『九月の雨』(1977年)など、筒美先生には多くの名曲を書いていただきました。私にとって恩師です。

『木綿~』はもともとアルバム用の作品で、松本(隆)さんの詞が先でした。男女が手紙を通じて会話をする歌詞が4番まであるので、先生は「長くて曲をつけづらいから書き直してもらおう」と思ったようです。

 でも当時は携帯電話もメールもなかったので、飲みに出ていたディレクターがつかまらない(笑い)。それで仕方なく曲を作り始めたらスルスルッと完成した。翌日は「すごくいい曲ができた」とおっしゃったらしいです。もしあの時、携帯があったら『木綿~』は全く違う曲になっていて、私の人生も違ったものになっていたかもしれません。

 先生は物静かな方なんですが、人の心の奥底を見ている感じがして、お会いする時はいつも緊張しました。曲づくりに関しては常にヒットを狙っていて、大衆がいま、どんな音楽を求めているかとか、その歌手の個性を引き出すにはどういうメロディがいいかということを考えながら作られていた。

 私の場合は地声からファルセットに替わるポジションが魅力だったみたいで、『木綿~』では、冒頭の旅立つ~の「つ~」がその部分にあたります。それが聴く人の印象に残ってヒットに繋がったのではないでしょうか。

 先生の曲は一見、簡単そうに聴こえるんですけど、いざ歌おうとすると難しいメロディだったり、複雑なコードが用いられたりしていて演奏するのも大変。それを親しみやすく聴かせてしまうのが筒美京平のすごいところだと思います。

 先生から与えられたたくさんのメロディは私の誇りであり、宝物。これからも感謝とともに大切に歌っていかなくてはと思っています。

【プロフィール】
太田裕美(おおた・ひろみ)/1955年生まれ、東京都出身。1974年に『雨だれ』でデビュー。フォークと歌謡曲の中間的な路線で人気を集める。『木綿のハンカチーフ』は年間4位の大ヒットを記録。

取材・文/濱口英樹

※週刊ポスト2021年8月13日号

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