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「土下座」はかつて、大名などの貴人に最敬礼を示すための姿勢だった。だが、令和の世のどこにも、そんな相手はいない。私たちが最も尊ぶべきは、自分自身。心と体の健康のためには、たったひとりで、自分のために土下座するのが正解だ。
ヨガインストラクターの半田ひろみさんによると、土下座は「チャイルドポーズ」「休憩のポーズ」といわれ、心身をリラックスさせるのに適しているという。
「床に正座し、両手をついて“土下座”の体勢になったら、床につけた手を前方にすべらせるようにして、できるだけ遠くに伸ばします。すると、肩まわりの筋肉の緊張が取れて、肩こり解消につながるほか、背中や腰まわりの筋肉がリラックスすることで、自然と深くゆっくりした呼吸ができるようになります」(半田さん)
ストレスや緊張を感じているときは、呼吸が浅く、速くなる。すると、肺の真下にある横隔膜が充分に動かない。アスレティックトレーナーの森本貴義さんによれば、呼吸において最も重要なのは横隔膜だという。
「現代人は、呼吸するときにほとんど横隔膜を使えておらず、呼吸のたびに肩や首の筋肉に余計な力が入っています。慢性的な肩こりや首こりは、呼吸が浅くて速いことにも原因があるのです」(森本さん)
土下座の姿勢を取ることによって、肩や首の筋肉をゆるめながら、横隔膜をしっかりと動かして、深くゆっくりした呼吸ができるのだ。
「横隔膜には自律神経が密集しているため、深くゆっくりした呼吸を繰り返すと、乱れた自律神経を整えることにもつながります」(半田さん)
自律神経は、呼吸のほか、睡眠や消化、血流など、全身のあらゆる生命活動を管理しているため、深くゆっくりした呼吸をすることで、全身の機能を高めることができる。さらに、疲労回復や免疫力の向上も期待できる。
「正しく呼吸できると、充分な酸素供給によって脳や全身の細胞が活性化するとともに、老廃物の排出もスムーズに行われるようになります。また、血行がよくなることで毛細血管のすみずみまで血液がめぐり、それと同時にウイルスや細菌などに対抗するリンパ球が増えるのです」(森本さん)
確かに、頭も腕も床に預けると、体の力を抜きやすい。だが、ただ“ひれ伏す”だけでは、完璧とはいえない。さらに土下座の効果を高めるには、「鼻呼吸」が大切だ。
「土下座するときは、ひたいを床につけてください。背中や腰を丸めて力を抜き、全身を重力にゆだねながら、鼻から息を吸って、鼻から吐きます。これにより、無理なく自然に深呼吸ができ、より大きく横隔膜を動かすことができます。最低でも、30秒~1分程度かけて、鼻での深呼吸を10回以上行ってください。おすすめは、夜、寝る前に行うこと。副交感神経が優位になって、眠りの質が上がります」(半田さん・以下同)