誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない“馬券生活”。「JRA重賞年鑑」で毎年執筆し、競馬を題材とした作品も発表している作家・須藤靖貴氏も、馬券生活を夢見る一人だ。そんな須藤氏が、万馬券ゲットのために夏競馬の格言「夏は牝馬を狙え」を疑って騎手に注目して検証した結果、発見した新しい法則についてお届けする。
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馬までも萌黄の蚊帳に寝たりけり 一茶
暑く、そして閉塞感あふれる令和3年の夏。人馬ともにぐったりしますね。
さて、酷暑に競走馬はどうなのかという話。夏競馬の格言で知られる「夏は牝馬を狙え」。データ的に信憑性が高かった。特に8月は女子が元気。勝率で牡馬を上回るまではいかないものの、他の月に比べると男子との差を詰めていた。
牝馬が元気な論拠の一つに、「夏の地方開催は牝馬有利」がある。ほぼほぼ平坦なコースというファクトを踏まえ、牡馬にパワー負けしにくいというわけである。これをさらりと検証した。8月の小倉、新潟、札幌だ。前回に引き続き、2016~2020年の1289レースのデータを取った(JRA-VAN TARGET使用)。
牝馬の単勝回収率を見ると、やはり暑い小倉が99円と一番。新潟75円、涼しい札幌は75円。これが複勝回収率だと札幌の83円が良く、新潟74円、小倉72円。小倉のみが全体の回収率(81円・70円)を、牝馬のそれが上回っていた。
競馬場の傾向は割とあっさり。では騎手はどうか。夏男(女性も)はいるのかどうか。鞍上は牝馬をどう乗りこなすのか。
ちなみに8月生まれの騎手は意外に少なく、勝浦、菊沢、藤田の3人。上記期間でのそれぞれの回収率を見ると、100円超えは勝浦の牝馬複勝(102円)、藤田の牝馬単勝(102円)と全馬単勝(100円)。がんばっている。
リーディング上位常連に目を向けてみる。8月のルメール、武豊はともに単複の回収率80円台とそれほど芳しくない。松山も単勝回収率で67円、複勝88円。牝馬だと単勝58円、しかし複勝104円。田辺も牝馬の複勝が140円(単勝は42円)。東西の両雄は人気薄の牝馬を巧みに馬券圏内にもってくるのだった。
単勝回収率でいいのは吉田隼の139円。これが牝馬だと69円と下がる。極端な傾向が面白い。