コロナ禍の在宅勤務も相まって、子どもの中学受験に父親が積極的に関わる家庭が増えている。だが、中には熱心になりすぎて、かえって子どもの足を引っ張るケースも相次いでいるという。中学受験に詳しい安田教育研究所の安田理氏が、父親による受験参画の問題点をレポートする。
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受験の“天王山”と言われる夏休み。不要不急の外出は避けなければならず、親子して家にいる時間が増えている。そんな中、周りから聞こえてくる声は、
「中学受験が異常に盛り上がっている」
「模試の状況を見ると、2022年度入試はさらに受験生が増えそうだ」
といったものばかり。そんな危機感もあり、このところ講演会や合同相談会で目立つのが父親の姿だ。
平日の受験相談会に詰めかける父親
長年中学受験の保護者向けに講演しているが、ひと昔前は目の前に座っているのはほとんどが母親だった。筆者も2人の子どもを中学受験させているが、当時は母親任せで、子どもの受験で会社を休むことなどありえなかった。
だが、安田教育研究所を設立し、いろいろな新聞社・雑誌社の取材を受けている折に、記者自身の子どもの話を聞いていると、近年は2月1日・2日の受験集中日はふつうに会社を休む父親が多いそうだ。
今年6月、渋谷のヒカリエで開かれていた合同相談会をのぞいたところ、平日にもかかわらず大企業のサラリーマンタイプの父親が詰めかけていたことに驚いた。リモートワークで家にいるから出てきやすいのだろう。
同じ6月には、逗子の塾で、神奈川南部の私学の校長・教頭4名の先生とパネルディスカッションを行った。参加者は父親・母親半々で、しかも終了後に質問したのはすべて父親だった。この塾ではかれこれ10年近くこうした機会を持っているが、これまではこんなことはなかった。
パネルディスカッションの実施日は子どもの模擬試験の日だったため、来ている保護者は小5・小6が中心。だが最近は、子どもがまだ入塾していない小1・小2の保護者が参加するケースも増えている。子どもが小さいうちから受験に参画しているのである。
今年受けた父親の質問には、「将来法学部に進ませたいと思っているのですが、慶應の普通部に進めば大学では問題なく法学部には行けるものでしょうか?」など、かなり突っ込んだ内容のものがあった。父親らしい質問であった。