2021年の高校野球、夏の甲子園大会が、原則無観客で開催されることになった。2020年から続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、多くのイベントや競技会などが影響を受けているが、高校野球は一般的な人気や注目度が高いこともあり、社会問題化されやすい。22校が出場する鳥取県の夏の甲子園大会予選で起きたコロナ感染をめぐる出場辞退騒動をきかっけに、他地域に教員にも動揺が広がっている。ライターの森鷹久氏が、「大人の判断」に迷う教員の胸のうちをきいた。
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「批判をされないためにやった事を批判され、感情に任せた議論によって子供達が振り回される。結果、マスメディアが美談のように報じていますが、違和感しか残りません。絶対におかしい」
南関東の公立中学校教諭・早川宗一さん(仮名・30代)が憤るのは、コロナ禍における大人たちのパニックが、子供たちを混乱させているという事実について、である。
夏の高校野球・鳥取県大会、第一シード校で優勝候補の米子松蔭高校では7月16日深夜、学校関係者1人の新型コロナウイルス感染が判明した。この関係者と野球部員に接触はなく、生徒に実施された抗原検査でも陽性者は出なかったというが、学校側は鳥取県高校野球連盟が定めた感染防止対策要領に基づいて17日に出場辞退を申し出た。本来なら17日の第1試合、2回戦から登場予定だったのを辞退したことで相手校は不戦勝となった。しかし、野球部主将の生徒が、出場辞退について「あまりにもつらい」とSNSに投稿。出場する機会がないのかと訴えたのである。
さらに米子松蔭高校は、県高野連に対し大会への復帰を求める嘆願書を提出。このことがメディアで報じられると、鳥取県高野連は一転して同校の大会復帰を決めた。だが、そもそも県高野連の規定では、学校で感染者が確認され、休校などになった場合には出場できない、とされていた。保健所の検査で安全が確認されれば出場は認められるとしていたが、試合開始時間が迫っていたため、出場辞退を申し出ざるをえない事情があった。
この一連の出来事を改めて振り返ると、学校側もほかに選択肢がなかったのか、大会規定も、今のコロナ対応としては不十分だったと言えるかもしれない。だが、問題はその全てが「大人の判断」によって起きているということである。
「私の学校でも、生徒の祖父の感染がわかり、重要な大会を控えていたスポーツ部の生徒たちが、学校の判断で出場を辞退したのです。だから鳥取の子供達の憤りがすごくわかる一方で、一度なされた決定が世論の声でひっくり返るならば、もはや規則や決まりが意味を持たなくなるとも感じます」(早川さん)