東京五輪のために全国から警察官が応援にやってきている。新型コロナウイルス感染症のために世界からの観光客は来なくなったけれど、都内を地方のナンバープレートをつけた警察車両が行き来する様子に、いつもと違う祝祭の雰囲気を感じ取ることができる。だが実は、地方から都内への応援に駆け付けているのは警察や役所関係者だけではない。ライターの森鷹久氏が、様々な仕事のために応援上京してきている人たちによる、密かな息抜きの様子をレポートする。
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「妻と娘と別れる時、正直少し感じましたよね。無事戻って来られるのかと」
都内の五輪関連施設内で働く東北地方在住の会社員・真田和明さん(仮名・40代)が苦笑いを浮かべる。真田さんの職場は、大手建設会社の支社であり、五輪に合わせて、全国から都内の本社に「応援」に来ているのだという。
「東北は感染者が少ないということで、感染者が増加している都内に行くのはやはり気が引けました。でも、応援に行くのは平時なら名誉なこと。私は二つ返事で応援を引き受けましたが、冷静に考えて、東京に数週間滞在して仕事をするのかと思うと、やはり怖いんですよ」(真田さん)
別の支店従業員の中には、応援を命じられても「コロナ」を理由に断固拒否する者もいたという。所属長から「強制でない」と説明はあるし、査定には響かないとは言われるものの、応援に行った者、行かなかった者、という事実は残るため、多くの地方社員は社命に応じて、感染拡大がハイペースで進む東京行きを甘んじて受け入れるのだという。
「五輪関連の業務」で、都内に滞在している関係者がどれくらいいるのかは不明だが、九州地方在住で食品系メーカー勤務の赤木晃さん(仮名・30代)は、7月上旬に本社業務の応援で上京した際、都内の繁華街が驚くほど賑わっていたと振り返る。
「うちなんか田舎だってこともありますが、コンビニ以外やってませんでしたからね。街を歩けば若者たちがマスクなしで酒を飲み歩いているし、歓迎会だって本社の上司から飲みに連れて行ってもらいましたが、肩を寄せ合いながらかなり密でした」(赤木さん)
赤木さんが上司に連れて行ってもらったという店は、都内某所の繁華街にある人気居酒屋で、緊急自体宣言下でも自治体からの要請を一切無視し通常営業を続けていることで有名だ。ちょうど今、そうした「闇営業」の店はまるで東京名物のように、こうした応援組に重宝されているようなのだ。