海や川に行く機会が多い夏は、水難事故の危険性も高まる。昨年の水難事故による死者・行方不明者は722人。大人の1位は海。子供の1位は河川が6割を占めた。そこで、さまざまなシチュエーション別に、水難事故に遭った場合の対処法を日本防災士会常務理事の甘中繁雄さんに聞いた。
◆川に落ちて、溺れそう!
川に落ちて溺れるときは、服を着たままのことが多い。甘中さんはこう話す。
「川に落ちたら『助けてー』などと叫んだり、手足をバタバタしてはダメ。まずは息を止め、肺に空気をためて力を抜く。これで体が浮きやすくなるので、その後、仰向けになって息を吸い、服の裾を持ち上げて空気を入れます。
スニーカーなどの靴は軽いため、履いたままの方が浮きやすく、服も空気を入れれば浮き輪代わりになります。立ち姿勢で手足をバタバタさせてもがくと、水を飲んだり、体に張りついた衣類が重くなり、沈みます。流れてくるペットボトルなどの浮遊物にしがみつき、仰向けで浮いたまま、救助を待ちましょう」(甘中さん・以下同)
仰向けで浮いたら手でバランスをとり、水面に浮いて救助を待つ。
「最近の子供たちは、学校の授業で着衣水泳の仕方を教わるようになっていますが、大人も水着+Tシャツなどの着衣に近い形で泳ぐ経験をしておくと、いざというときに慌てずにすみます」
◆海で離岸流に巻き込まれた
海で離岸流に巻き込まれた場合、まずは浜辺を横目に見ながら平行に泳いで移動する。そして離岸流の幅は10〜30mなので、流れの変化から抜け出たと感じたら浜辺に向かって泳ぐこと。アーティスティックスイミングのように、手と足を軽く動かす泳法は、体力をあまり使わずに移動しやすい。
◆ため池に落ちて、上がれない!
ため池での死亡事故が多いのは、想定外の深さにパニックになって溺れたり、岸に近づいてもぬるぬるした底面と傾斜が影響し、自力で這い上がれないつくりになっているからだ。仰向けになって呼吸を確保し、救助が来るのを粘り強く待とう。