夏休みの自由研究の定番だった標本づくりは、昆虫の減少や殺生をよしとしない教育方針によって廃れつつある。いまの子供たちは、昭和の頃以上に、「図鑑」で生き物への憧れを膨らませているのだ。あの頃子供たちが夢中になっていた図鑑は、時代とともに変化し、いまや、大人の想像をはるかに超える姿に進化している。
2002年に始まり、現在25巻まで刊行されている「小学館の図鑑NEOシリーズ」の根本徹編集長によれば、一冊の図鑑をつくるのに、少なくとも3年程度かかるという。動植物の情報だけに限らない、膨大な知識を盛り込む必要があるからだ。
NEOシリーズの『危険生物』では、学術的な分類ではなく、かむ毒や刺す毒といった危険の種類で分類して生物を紹介したうえで、医師の監修のもと、実際の症例写真とともに、危険を負わないための予防策と、実際にかまれたり刺されたりしたときの応急処置の方法まで細かく網羅している。
「“橋の下にハチの巣があったために、マラソン大会で橋が揺れて、何人もの参加者が刺されてしまった”など、実際に危険生物によって起こった出来事を『事件ファイル』としてまとめたコラムを随所にちりばめています。ただ怖がらせるのではなく、生き物との共生の考え方を知ってほしいという思いを込めました。
私たち人間という動物が、ほかの生き物と共生していくためには、ほかの生き物のことを正しく知って、正しく怖がることが大切だからです」(根本編集長)