「人流(じんりゅう)」とは、人の移動を伴う動静、人々の流動や動線をいうが、コロナ対策のなかで頻繁に耳にするようになった言葉だ。本当に人出は減っているのだろうか。俳人で著作家の日野百草氏が、東京五輪2020開幕後の連休から、東京都内で休日を過ごす人々の様子を追った。
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「これだけ人に来てもらうと本当に助かりますよ」
オリンピック開幕中の都内ショッピングモールは駐車場もほぼ満車、家族連れやカップルで賑わっていた。
「夏は稼ぎ時ですから、ホッとしました」
おしゃれなアイスクリーム屋は連日の猛暑もあって長蛇の列。モール内の混雑で行列の間隔は詰まりがち、同フロアのカフェも長居する人が多いのか、通路の椅子に腰掛けて多くの人が空きを待っている。
「ここの家賃も高いですからね」
冒頭からの声はアイスクリーム屋の店員さん。「盛況ですね」と話しかけるとマスク越しに笑ってくれた。
都内の外国人は思ったより少ない。東京駅周辺、秋葉原周辺、六本木、銀座、歌舞伎町と丸一日歩いたが以前よりは見かけない。いわゆるオリンピックファミリーの特例に対する日本国民の批判、とくに15分以内なら行き先を限定せず自由に外出できると宿泊先で案内していた組織委員会に対して、7月19日に原則である選手村か競技会場内にとどまることを徹底するよう内閣官房が要請したことが効いたのか、外国人は明らかに減った。代わりに増えたのは日本人だった。
もう誰も気にしてないんじゃないですか
「日中は暑いからさ、オリンピックの外人さんは日が落ちるとよく見かけたけど、最近は少ないね」
勝どき駅近くの公園、月島第二児童公園で夕涼み中の男性が語る。なるほど、そもそも真夏の日中は外に出ない国は多い。それに大会中は取材陣も含めて忙しいのだろう。それも含め、いわゆるバブル方式は一定の成果をあげたということか。ごく一部の外国人選手がやらかしているが、少なくとも東京中がオリンピック外国人だらけという状況は回避できた。
しかし、このオリンピック開幕後の都心各地は大変な人出となった。ついに緊急事態宣言は意味を失い、人流という一般国民による無言の反乱が始まった。