東京五輪の野球を見ながら、「13年前の悪夢」を思い出している阪神ファンもいるかもしれない。グループリーグ初戦のドミニカ共和国戦で2番手として登板し、先制点を許して3分の2でノックアウトされた青柳晃洋(阪神)。準々決勝のアメリカ戦でもリリーフとして登板するも、3ランを浴びた。チームは延長10回に甲斐拓也(ソフトバンク)のサヨナラヒットで7対6で勝利。準決勝にコマを進めたが、五輪での防御率27.00の青柳の心中は穏やかではないだろう。プロ野球担当記者が話す。
「稲葉篤紀監督がまたしても同点の場面で中継ぎ起用した時、疑問を抱いた野球ファンは少なくないかもしれません。青柳は今シーズンも先発でしか投げていないですし、ドミニカ戦と同じように左打者から始まる上位打線。案の定というべきか、打たれてしまった。次の登板があっても、接戦で投げさせることは流石にないのではないでしょうか。各チームの主力を預かる稲葉監督は選手に傷を付けたまま、返したくない。なんとか青柳に復調してもらいたいからこそ、敢えて同じような場面で投入したのかもしれません。そういう采配をする指揮官はいますからね。ただ、アメリカ戦ではそれが裏目に出てしまった印象です」(以下同)
今シーズンの青柳は14試合に先発して8勝2敗、防御率1.79と抜群の安定感を誇り、阪神が前半戦をリーグ首位で折り返す原動力となった。
「交流戦明けからは6連戦の1試合目となる火曜日を任されており、首脳陣の信頼を勝ち取っていた。変則の下手投げがカード頭に来て抑えると2戦目、3戦目の相手打線にも影響を与えられる。今年の青柳は8回、3連戦の1試合目に先発しています。その3連戦で阪神は勝ち越し5回、負け越し2回、1勝1敗1分が1回となっています」
阪神にとって、青柳は1人の先発投手以上の価値を持つ投手なのだ。東京五輪での不調は、阪神・矢野燿大監督を悩ませることになるかもしれない。
「2008年、阪神は前半戦に首位を独走し、7月8日にライバルである巨人に最大13ゲーム差を付けた。8月に北京五輪があり、阪神からは藤川球児、矢野輝弘、新井貴浩の3選手が選ばれた。ケガを押して出場していた新井は状態を悪化させ、帰国後1か月出場できなかった。五輪前、3番を打っていた新井の離脱は大きく、巨人に逆転優勝をされる大きな要因の1つになりました。今回はケガ人ではないが、不調のまま戻って来れば、シーズン中にも影響が出てもおかしくない」