東京五輪の男子ゴルフは、米国のザンダー・シャフリーの優勝で幕を閉じた。日本の松山英樹は銅メダルプレーオフに臨むも早々に脱落した。
その1時間後、霞ヶ関カンツリー倶楽部の出口付近では、「TEAM USA」と書かれた帽子を被った男性をはじめとする外国人と日本の警察が、通訳ボランティアを介して不穏な問答を繰り広げていた。そして、アスファルトには大量の宅配ピザの箱が積まれている。現場の警察官はこう話していた。
「外国の方がゴルフカートに乗って公道まで出て、ピザを受け取ろうとしたんです。それが道路交通法違反にあたるかもしれないということで、確認中です」
五輪会場はどこも、警察が規制区域を作って一般車両の進入を防いでいる。宅配ピザのドライバーも規制区域には入れないため、注文者は規制区域外まで受け取りに行かなければならない。そこでカートを使用してしまったのだ。ナンバーの付いていない原動機は、公道を走れない。
呆然と立ち尽くしていたのは宅配ピザのスタッフだ。
「注文の内容はLサイズのピザ30枚です。総額は9万2646円ですが、現金がなかったみたいで、一度、会場内に戻ってカードを持って来ようとした。そこで警察に止められたようです。実は昨日も34枚の注文があり、別の入り口で渡してスムーズにいったんですが……」
しばらくして部下に「係長」と呼ばれていた警官がピザを囲む人々に告げた。
「いま上席の判断が取れまして、道路交通法違反にはあたらず、口頭注意で終わります。お支払いがまだであれば済ませてください。ピザを運ぶのなら警察も手伝います」
基本的には外部との接触を禁じている大会の「バブル方式」上はOKなのか、ピザを食べた状況などについて組織委に聞いたが、回答は得られなかった。祝杯ならぬ祝ピザで、金メダルを称えようとしたのかもしれないが、日本のLサイズで米国チームは満足したのだろうか。
※週刊ポスト2021年8月20日号