東京五輪日本人メダリスト第1号を生み、男女・団体合わせて金9個、銀2個、銅1個と、メダルを量産した「柔道」。「ニッポンのお家芸」の面目躍如となったが、選手たちは他の競技に比べて“恵まれない”面もあるという。
「基本的にメダルを獲った選手には各競技の連盟や協会から報奨金が出ますが、柔道はそれが“0円”なんです」(スポーツ紙記者)
東京五輪では、金メダルの場合、たとえばテニスなら800万円、バドミントン・卓球・空手なら1000万円、陸上・ゴルフ・馬術に至っては2000万円の報奨金が各競技団体から支給されることになっている。
選手にとって報奨金は功績を認められ、努力が報われた「証」でもある。なぜ柔道は「0円」なのだろうか。
「報奨金を与える目的は様々ありますが、一つは『選手のモチベーションを上げる』ことです。競技人口が少ないマイナー競技ほど高額な報奨金が出る傾向がありますが、報奨金を出すことで競技人口を増やす意味も大きい。
その点、柔道は日本の伝統競技で人口が多く、他の競技に比べてメダル獲得数も多い。引退後も教師や警察官など活動の場が広いため、生活に困ることが少ないことも理由の一つでしょう」(スポーツライターの小林信也氏)
全日本柔道連盟に尋ねると、「報奨金は出しておりませんが、カデ(15歳以上18歳未満)・ジュニア(15歳以上21歳未満)強化選手を含めたすべての強化事業において、当連盟が費用を負担し、広く次世代の五輪選手の育成に努めています」(企画課)とのことだった。
「功績」よりも「育成」にお金をかける。それが圧倒的強さの原動力だったのかもしれない。
※週刊ポスト2021年8月20日号