日本に迫っていると予測されている巨大災害のうちのひとつが「南海トラフ地震」。いったい、いつ発生し、どのような規模だと想定されているのか。
政府の地震調査委員会は南海トラフ巨大地震の発生確率を「30年以内に70~80%」と発表しているが、京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏(火山学)はより具体的に「2035±5年で必ず起こる」と指摘する。
「南海トラフ巨大地震の震源域となり得るのは東海、東南海、南海の3エリアですが、その3エリアで巨大地震が連動する可能性があります。それは1707年の宝永地震以来の大災害です」
地震の規模は最大でM9.1、関東から九州までの広範囲で震度5弱以上の大揺れになる見込みだ。
「とくに四国4県や兵庫、愛知など10県153市町村で震度7となり、犠牲者は最大で32万人に達すると予測されます。2011年の東日本大震災以上の『西日本大震災』となる恐れがあります」(鎌田氏)
30m超の津波が3分で到達
南海トラフ巨大地震が最大規模で発生した場合、津波の被害は東日本大震災より甚大になる。
内閣府「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」によれば、高知・黒潮町で最大となる34.4mの津波が襲うほか、東は静岡・下田市に25.3m、西は宮崎県に約16mの津波が押し寄せる。
「しかも、巨大津波の到達時間が早い。西日本の太平洋沿岸には、地震発生から最短3分程度で巨大津波が到達すると予想されています。東日本大震災で3m以上の津波が到達したのは、地震発生から約30分後のことでしたが、南海トラフでは逃げる時間がほぼありません」(鎌田氏)
その結果、人口の半数近い6000万人が被災するという。
大地震後、富士山噴火も
被害は地震と津波だけに留まらない。鎌田氏は「南海トラフ巨大地震が富士山噴火の引き金になる可能性がある」と指摘する。
「1707年、宝永地震の49日後に富士山は大噴火を起こしており、以来300年以上マグマが溜まり続けています。富士山直下のマグマ溜まりは東日本大震災で揺すられ、さらに南海トラフ巨大地震で強い揺れが加われば、泡立ったマグマが勢いよく噴出して大噴火に至ります」
静岡、山梨、神奈川の3県からなる富士山火山防災対策協議会は今年3月、17年ぶりにハザードマップを改定し、溶岩噴出量を従来の約2倍に想定。溶岩は最大で神奈川県まで流れ、東海道新幹線や東名・新東名高速を飲み込む可能性も指摘された。