ついに閉会式を迎えた東京五輪。アスリートたちは熱戦を繰り広げ、結果に歓喜したり、涙にくれたりしたが、その裏では選手をサポートするメーカーの関係者たちにも“泣き笑い”があった。
「テレビ画面にアップで映ったり、スポーツ紙の1面に自社ブランドの写真が載ればガッツポーズですよ」
そう話すのは、あるスポーツメーカーの営業担当者だ。4年に一度の大舞台となるオリンピックは、スポーツ用品メーカーにとっても大きな“戦いの場”となる。
オリンピック憲章の規則61には選手が使うギアやウエアについて細かい規定があり、〈衣類、もしくは用具のうえにはいかなる形の広告や宣伝やコマーシャル等の表示をしてはならない〉と定められている。
ただし、この規則は続きがあって、〈その用品もしくは用具のメーカーの表示が総面積にして9平方センチメートル以内である場合はそのような表示を例外として認める〉という細則がある。つまり、商業目的のスポンサーロゴはNGだが、スポーツメーカーのロゴは認められている。この細則では名前、称号、商標、ロゴという形で、メーカー表示は一用品もしくは一用具につき一つまで表示できることになっている。スポーツ紙記者が語る。
「日本の大手スポーツ用品メーカーのアシックスは東京五輪組織委員会と最高位スポンサーの『ゴールドパートナー』として契約。過去、ミズノ、デサントと3社で分担してきた公式スポーツウエアをリオ、平昌、東京の3大会で独占することになった。ゴールドパートナーの負担金は150億円以上とされる。この額はミズノの年間の経常利益を大きく上回る数字だった。これにより、日本選手団の公式ユニフォームはアシックスのウエアとなり、東京五輪までは国内のスポーツ用品メーカーで唯一、五輪のマークを使った広告宣伝活動ができるようになった。五輪招致に力を注いできたミズノは敗れた形だった」