行き詰まるコロナ対策や感染拡大さなかの五輪強行開催で、支持率が急落する菅政権。この窮地のなか、菅首相は自民党総裁選をどう戦うのか。亀井静香氏(84)、山崎拓氏(84)、藤井裕久氏(89)、政界の長老3人が分析する。
* * *
藤井:横浜市長選(8月22日投開票)では、側近だったはずの小此木八郎さんが菅(義偉)さんへの相談なしに出馬するという。私は今は自民党の外にいますが、神奈川県連で父親である小此木彦三郎さんの言うことを聞いて育った。地元の横浜を見ていても、菅さんの総裁再選は非常に厳しくなっているとみています。
山崎:横浜市長選の結果は、政権運営に大きな影響を与えると思います。小此木八郎さんが閣僚の座、国家公安委員長という今一番重要なポストをなげうって市長選に出た。こんなことは異例中の異例ですよ。
僕は父親の小此木彦三郎さんと同じ派閥(中曽根派)だったし、彦三郎さんが国対委員長だった時、梶山静六さんが国対委員長代理で、私が副委員長だった時代がある。菅さんは彦三郎さんに秘書として仕えながら常に梶山さんを「政治の師」と仰ぎ、国会の施政方針演説でも梶山さんの言葉を引用している。ところが、彦三郎さんのことは一言も出てこない。私はこれが今回の行動の原因だと思うんです。
小此木八郎さんは藤木(幸夫=横浜港運協会前会長)さんをバックとして、菅さんが推進してきたIRカジノ反対まで打ち出した。慌てた菅さんはやむなく小此木さんを応援すると言い出したが、勝てば丸く収まるが、万一負ければ、菅さんの地元での威信に傷がつきます。
亀井:あそこは大混戦だね。誰も有効得票の25%取れなくて、再選挙になるかもしれない。
山崎:横浜市長選で負けて、感染拡大も収まらなければ、内閣支持率はさらに下がる。支持率が万一20%を切るという状況になったら、かつての森(喜朗)政権のように解散権が事実上封じられる。そうして選挙の前にまず総裁選になったら、後ろ盾となっている安倍(晋三)さんや麻生(太郎)さんも菅さんの続投を支持しなくなるでしょう。
藤井:自民党における2A(安倍・麻生)の影響力は非常に大きいが、僕はもうその2Aは反・菅にシフトしていると思います。2人は選挙の負けを見越して菅さんと距離を置き、キングメーカーとしての力を維持しようとしているのではないか。
一方、二階(俊博)さんの場合は、僕は「小型金丸」と呼んでいますが、理念はないが世の中を動かすことはうまいので、2Aとはまた違う論理で動くと思います。