日本の女子バスケが史上最大のサプライズを起こす──そんな期待が膨らんだ東京五輪最終日。予選リーグを2勝1敗で突破した日本(アカツキファイブ)は、準々決勝でベルギーを、準決勝でフランスを破って決勝に進出。待ち構える相手は、五輪55連勝中で、7連覇を目指したアメリカである。
ここまで快進撃をみせたメンバー12人の根底に流れていたもののなかに、「反骨」があったのではないか。
大会前、大きな注目を集めたのは同じバスケ日本代表でも八村塁や渡邊雄太というNBAのチームに所属するスター選手を擁する男子だった。五輪直前の国際強化試合にしても、地上波テレビの生中継があるのは男子だけ。女子はBSやインターネット配信のみだった。一部の熱心なバスケファンからは「世界ランク42位の男子より、女子のほうがよっぽど強い(世界ランク10位)のに、なんでこんなに扱いが違うのか」といった声もあがったほどだ。
また、東京五輪で実施される女子の団体競技にあっても、大会前からメダルの期待を集めていたのは2008年北京五輪以来の正式競技となったソフトボールや、サッカーのなでしこジャパンだった。
だが、閉会式が行われる8月8日という、大会の最終盤に話題を独占したのは女子バスケだ。平均身長176センチの日本代表は、190センチ超の選手を5人も擁するアメリカ(平均身長184センチ)に対し、世界を圧倒してきたスピードと3Pシュートを武器に挑み、75対90で敗れたものの、日本代表選手団にとって58個目となる銀色のメダルを手にした。
日本の司令塔で、大会終了後に国際バスケットボール連盟によるオールスターファイブにも選出されたPGの町田瑠唯が明かす。
「男子バスケが盛り上がって、一方の私たちは結果を残さなきゃ見てもらえないとはわかっていた。こうして決勝までたどり着けて、いろんな方に見てもらえたと思います。(監督の)トム(・ホーバス)さんが『日本の女子バスケは金メダルを獲ります』と言ったことに対して、周りは誰も信じていなかった。正直、私たちも渡嘉敷(来夢)さんが昨年12月にケガ(右膝前十字じん帯断裂)をした時に、無理だと思ったんですけど、トムさんだけはそれを言い続けてくれて、自分たちも信じてバスケットできた。それがこの結果につながったと思う。今後も注目してもらうためには、世界で結果を残すことしかない。観てくださった方に勇気とか元気を与えられたら、もう一度観たいと思ってもらえる。もっと良いバスケット、もっともっと良い結果を残したい」