新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で、最初に東京都など7都道府県に緊急事態宣言が発出されたのは昨年4月7日のことだった。それから1年以上が経ったが、新型コロナは収束に向かうどころか急拡大の状況になってきている。
緊急事態宣言が繰り返されるなかで在宅勤務も定着しそうな流れにもなってきているが、そこでの問題点も浮かび上がってきている。
「うちには1歳になる子がいまして、在宅勤務が基本になった頃は0歳でした。リモート会議をやっていると後ろで赤ん坊の鳴き声がしたり、逆にリモート会議での話し声で昼寝中の子を起こしてしまったりと、たいへんでした」
そう話すのは、キリンビール広域流通統括本部の久保田幸輔さん(30代)。そもそも「家は寝に帰るところ」(久保田さん)でしかなかったので、家族の存在を気にしないでリモート会議ができるようなスペースは確保されていないからだ。
キリンビバレッジ営業部の山本亜紀子さん(50代)は笑いながらこう語る。
「主人も在宅でしたので、2人でリモート会議が重なると、違う部屋にいても声が聞こえてくるんです。主人とは同じ会社なので仕事の内容がわかるので、つい口出ししてしまってケンカになる。そんなムダな時間を使ってしまうのも在宅勤務のデメリットでした」
さらに困ることが在宅勤務にはあったという。
「両親との同居もあって、私が家にいると、仕事中でも用事を言いつけられる。私は私で、家にいると掃除や洗濯が気になってくる。掃除は週末で良いと割り切れなくなって、朝の仕事前にバタバタと動いてしまう。精神的に疲れましたね」(山本さん)
そこでキリングループでは、社員の自宅近くや営業先の近くにある「シェアオフィス」を利用できるようにした。複数の企業がワークスペースを共有するオフィスである。その理由を、キリンホールディングス人事総務部の山田俊和さんが説明する。
「昨年4月に緊急事態宣言が発出され、半強制的に在宅勤務となりました。そして、『やってみたら、意外にやれるじゃないか』となった。そして、新型コロナの収束も先行きが見えないなかで、在宅勤務を積極的に取り入れていくことが会社の方針となりました。ただ調査してみると、自宅ではスペースなど環境面で問題があることがわかりました。それを解決するために、昨年7月から試験導入を経て、9月からの本格利用に踏み切りました」
キリングループで働く先ほどの2人も、現在は積極的にシェアオフィスを利用している。久保田さんが言う。
「シェアオフィスの会議室を使ったリモート会議は快適です。私は営業なのでお客様まわりが多いのですが、時間調整のためもあって以前はカフェで仕事していました。現在はお客様の近くのシェアオフィスを利用できるので、セキュリティの面でも安心だし、集中できて仕事の能率もアップしています」
山本さんも、在宅勤務や本社ビルへの通勤と並行して、週2回ほどは自宅から近いシェアオフィスを利用している。