鳴り物入りでスタートした朝ドラだが、順風満帆とは言い難いようである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘した。
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清原果耶主役のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(月~金・午前8時)。6日の平均世帯視聴率が11.5%(関東地区)という記事を目にして驚愕しました。まさか。盛り上がっていないとは聞くけれどそこまで落ちたのか。いやいやその日は広島平和記念式典があり、朝ドラの放送開始が8時ではなくて伸びた。それが視聴率に影響を及ぼした、と気付きました。
録画視聴や見逃し配信の普及もあり、必ずしも視聴率が指標の全てではない。とはいえ、この朝ドラが最近パッとしないのもたしか。例えば『おかえりモネ』をネット検索すると「つまらない」という関連キーワードが表示される。多くの人がどこかモヤモヤして今ひとつ面白くない、と感じとっているのかもしれません。「苦戦はご都合主義の脚本に?」(日刊ゲンダイDIGITAL 2021年8月7日)という見出しも目にしました。
「ご都合主義」な要素。そうです、振り返るとご都合主義は随所に顔を出してきました。例えば上京してきた百音(清原果耶)が、宮城で出会った医師・菅波先生(坂口健太郎)と広い広い東京でバッタリ再会するあたり。同じコインランドリーを使っていたとは、もうびっくりです。
今週は最もわかりやすいご都合主義的展開が見られました。
テーマはパラリンピック選手の選考会。熱中症になりやすく夏のレースで葛藤する車いすマラソン選手の鮫島祐希(菅原小春)。「スポーツ気象」という角度からサポートしたいという気象予報士・朝岡(西島秀俊)に、一緒にチームに入ってと頼まれた百音。
気温や風向き、鮫島の深部体温など徹底的にデータ分析しそれに裏打ちされたレースの「プランA」を作り上げる。
さて、車いすマラソンの選考会が迫ってきた時。百音は鮫島に「勝負に出てみてはどうか」と、これまでと別のプランを提案する。
「向かい風を切り裂いて全員ぶっちぎるのが鮫島さんのスタイルですよね」とこれまでのデーター主義をやめ、感覚で走る「プランB」を進言。
そして選考会当日、突然雲の流れが変わった。「風が吹きます!」と百音は叫ぶ。鮫島は得意の向かい風の中で疾走し、選考会を見事パス……突然の風によって、鮫島がタイムを上げ百音の言った通りになる結末。ドラマツルギーとしてこの展開はどうなのか。ご都合主義の風が吹き過ぎていませんか。