雨天順延が続いている今年の甲子園だが、最注目株と言えば秋田・明桜の157キロ右腕・風間球打だ。投手が本職だが、「球打」というその名は「きゅうた」と読む。
山梨県に生まれた風間は三男坊で、長男から球道(きゅうどう)、球星(きゅうせい)、弟は球志良(きゅうしろう)と、甲子園を宿命づけられた野球一家に育った。“火の玉ストレート”を武器に阪神で活躍した藤川球児のように、夏の甲子園を足掛かりに、プロの舞台に飛び込みたいところだろう。
49代表校のベンチ入りメンバーは各18人で出場選手は882人。球児の名は時代を映す鏡だ。
早稲田実業の荒木大輔がスターとなった1980年代は、息子に「大輔」と名づけるのが大流行した。その頃に生まれたのが、1998年に横浜高校で春夏連覇を達成する松坂大輔だ。
時代によって名前に使われる漢字のはやりすたりがあるのは球児も同じだ。近年、男子の名前に使われることが多い「翔」だが、甲子園でも中田翔(元・大阪桐蔭)や大谷翔平(元・花巻東)が活躍してきた。同じく「斗」も男子の名前に使われる漢字ランキング上位の常連で、昨夏の甲子園独自大会で登板し、中日にドラ1入団した高橋宏斗(元・中京大中京)らがいる。
そして今年、9年ぶり29回目の夏となった県立岐阜商業の主将は、そのふたつの字を併せ持つ高木翔斗。読み方は「しょうと(ショート)」でも、守るポジションはキャッチャーで、彼もまたドラフト候補の大型選手だ。ポジションを連想する名前として、宮城・東北学院の直井良偉人(らいと)という球児もいる。彼の場合も守備位置は外野ではなく内野だという。
甲子園では「達也」「和也」という選手が登場するとアニメ『タッチ』の主題歌が流れるのも定番。人気野球マンガに由来する名前は多く、今大会は『巨人の星』の主人公と同じ名の渡辺飛雄馬(ひゅうま)という球児が福井・敦賀気比にいた。また、奈良の智弁学園の三垣飛馬も同じ読みだ。ちなみに埼玉・浦和学院には宮城誇南(こなん)という、あの少年名探偵を想起させる名も。
開会式の前々日に閉幕した東京五輪のバスケットボールでは、NBAウィザーズに所属する男子代表の八村塁、ポイントガードとして女子代表を牽引した町田瑠唯というふたりの「るい」が日本の柱となった。日本にこの名前が増えた一因として、サッカー界のレジェンド、ラモス瑠偉の存在大きいだろうが、2015年の甲子園では関東一のオコエ瑠偉(現・楽天)が打と足で甲子園を沸かせた。
そして、今年の開幕ゲームに登場した日大山形でこの名を持つのが背番号「10」の滝口琉偉だった。4対1でリードした9回表に無死満塁の大ピンチでマウンドに上がり、三者連続三振。見事な火消しで走者を「塁」上に釘付けにした。