東京五輪が閉会し、永田町ではパラリンピック後の自民党総裁選に向けた「政治の季節」がやってきた。そうしたなか、自民党内で「菅政権の行方を決める」と注目されている動きがある。
「麻生太郎・副総理が安倍晋三・前総理の私邸を訪ねて秘密会談を行なった」という情報が駆け巡っているのだ。会談は「7月30日」とされる。
ちょうど東京都のモニタリング会議が「爆発的感染拡大に向かっている」と報告。政府は緊急事態宣言を8月31日まで延長して首都圏3県と大阪府に拡大する方針を固め、菅義偉・首相が望みをつないでいたパラリンピックの有観客開催が絶望的になった時期にあたる。
同じ東京都渋谷区にある安倍氏の私邸と麻生邸は直線距離で約300メートルと近く、安倍邸の屋上から麻生邸の大屋根が見えるとされる。
安倍政権以来、政治的盟友である2人がわざわざ安倍邸で密会するときは極めて重要な決定が行なわれてきた。
たとえば、2017年9月10日の私邸会談では、安倍首相(当時)がその約2週間後に突然、「国難突破解散」を表明した。昨年8月15日の私邸会談の場合も、安倍首相はその約2週間後に突如として退陣を表明した。
「差し」の会談とあって2人が内容を明かしたことはなく、とくに今回は安倍氏が現職首相ではないため、会談の存在が首相動静に載ることもない(麻生太郎事務所は、「スケジュールについては、公表しているもの以外、お答えしておりません」と回答)。
だが、麻生派議員はこうみている。
「あの2人が私邸で会うときは何か大きなことが起こる前触れ。麻生さんのほうから安倍さんの真意を確認するために出向くことが多い。タイミングからみて、総裁選の情勢を話し合ったと考えて間違いないだろう」
余波はすぐに現われた。会談情報が広がると、自民党内で総裁選への動きが慌ただしく始まった。
まず安倍側近の高市早苗・前総務相が『文藝春秋』9月号で出馬宣言するという情報が同誌発売前からパッと広がった。
同誌で高市氏は、菅首相のコロナ対策を安倍前政権と比較しながらこう批判している。
〈安倍内閣では、批判を恐れずに国債を発行して「定額給付金」など巨額の財政出動を断行したが、現在は小出しで複雑な支援策に終始している感がある〉