ライフ

佐藤愛子さん、最後のエッセイ集 断筆宣言は「だって、書けないんですもの」

佐藤愛子さん

最新&最後のエッセイ集を上梓した佐藤愛子さん

 2017年の年間ベストセラー総合第1位になった『九十歳。何がめでたい』の発売から丸5年。待ちに待った佐藤愛子さんの最新エッセイ集『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』(女性セブンの連載「毎日が天中殺」を改題)が刊行され、早くもベストセラーランキングを席巻している。本書の中で断筆宣言をした佐藤さんに、その理由やコロナ禍の過ごし方などについて語ってもらった。

 * * *

いわゆる世間の風には1年半ほど触れていない

「最後のエッセイ集」と銘打たれた佐藤愛子さんの『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』が発売された。128万部を超える大ベストセラー『九十歳。何がめでたい』の、待望の続篇である。

『九十歳。何がめでたい』が売れに売れたために、取材や執筆、テレビ出演などをこなし、ヘトヘトになって昏倒して顔を打ち、「コテンコテンにやられたボクサー」のようになったことや、40代半ばで離婚し、元夫が残した借金のため馬車馬のように働き、返済して北海道に別荘を建てた話、幼い頃や戦争中の記憶、最近の政治やニュースについての時評など、多彩な話題がユーモアをちりばめ綴られている。

 長引くコロナ禍の中で、佐藤さんはどう過ごしておられたのか。

「ワクチンは2回接種しましたが、全然、外に出ていません。整体には通っていますけど、車で行くから、いわゆる世間の風には1年半ほど触れてないですね」

 もう、よれよれです、と言われるが、電話がかかってくると、すっと席を立ち、みずから受話器を取って応対する。「元気そうで」と言われてしまうのが悩みの、張りのある声も健在だった。

 5月、『女性セブン』誌上での、突然の断筆宣言には驚いたが、いま思えば予兆はあった。

 その少し前、「マグロの気持」と題して、父である作家佐藤紅緑が、編集者から原稿への苦情の手紙をもらい、筆を折ったときのエピソードが紹介されていたのだ。数か月後、思うように書けず、丸めた原稿用紙が散乱した書斎を見た孫に、「おばあちゃん、もう、書くのをやめれば……?」と言われ、医者には「書くのをやめたら死にます」と予言されるが、「かくして私はここに筆を措(お)きます」と、断ち切るように読者に別れを告げた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

無罪判決となった須藤早貴被告
《紀州のドンファン・13億円の遺産》「私に渡したいって…」元妻・須藤早貴被告が無罪判決で勝ち取る「13億円遺産相続」のゆくえ 野崎さんきょうだいら・田辺市との“3すくみバトル”
NEWSポストセブン
民事裁判は今年11月26日、新井氏に165万円の支払いを命じた判決が確定している
【今度は「胸と太ももを触られた」と主張】群馬・草津町長からの“性被害でっちあげ”の罪に問われた新井祥子・元町議 初公判で主張した“わいせつ行為”の内容の不可解な変遷
NEWSポストセブン
渡辺氏から直接、本誌記者が呼び出されることもあった(時事通信フォト)
《追悼・渡辺恒雄さん》週刊ポスト記者を呼び出し「呼び捨てにするな、“ナベツネさん”と呼べ」事件
週刊ポスト
平原容疑者の高校生時代。優しい性格だったという
【北九州・女子中学生刺殺】「まさかあいつが…」平原政徳(43)の高校クラスメイトが語った素顔「バスケ部で、喧嘩を止めるタイプだった」優しい男が凶悪犯に変貌した理由
NEWSポストセブン
送検時の平原容疑者(共同通信)
「大声出して何が悪いんだ!」平原政徳容疑者(43・無職)、事件3日前に「大量のカップ酒」空き瓶が…ゴミ収集車が行った後に 近隣住民が感じた恐怖【北九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
杖なしでの歩行を目指されている美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、「海外渡航はもうおしまい」と決断か 来年度予算から地方訪問同行職員の航空チケット経費が消滅 過去の計128回海外訪問も韓国訪問は叶わず
女性セブン
筒香嘉智が今季を振り返る(撮影/藤岡雅樹)
【筒香嘉智インタビュー】シーズン中に電撃復帰した“ハマの主砲”が喜びを語る「少しは恩返しできたかな」「最後に良い感覚がやっと戻ってきた」
週刊ポスト
球界の盟主が”神の子”に手を差し伸べたワケは(時事通信フォト)
《まさかの巨人入り》阿部監督がマー君に惚れた「2009年WBCのベンチ裏」 幼馴染・坂本勇人との関係は「同じチームにいたくない」
NEWSポストセブン
中居正広
【スクープ】中居正広が女性との間に重大トラブル、巨額の解決金を支払う 重病から復帰後の会食で深刻な問題が発生
女性セブン
今オフのFA市場で一際注目を集めた阪神の大山悠輔(時事通信フォト)
もし、巨人が阪神・大山悠輔を獲得していたら…レジェンドOBが侃々諤々「一体、どこを守らせるつもりだったんですかね?」
NEWSポストセブン
大河ドラマ初出演、初主演の横浜流星
横浜流星、新大河ドラマ『べらぼう』撮影でアクシデント “祠を背負って何度も猛ダッシュ”で…想像を絶する「根性」
女性セブン
ワールドシリーズを制覇し、3度目のMVPを獲得した大谷翔平(写真/AFLO)
【故郷で異変】大谷翔平 「グッズ爆騰」で「小学校時代の直筆手紙」が”閲覧不可”になっていた
NEWSポストセブン