コロナ自粛や猛暑の影響で、ついつい自宅でお酒を飲み過ぎてしまう人も多いだろう。そんな飲酒シーンの変化や健康志向も相まって、アルコール度数の低いビールが注目を浴びている。果たして“微アル市場”は今後も拡大するのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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ビール業界が、糖質ゼロビール組と微アルコールビール組に分かれたのは興味深い。前者はキリンビールの「一番搾り糖質ゼロ」とサントリービールの「パーフェクトサントリービール」、後者はアサヒビールが発売した「ビアリー」で、微アル戦線には新たにサッポロビールが「ザ・ドラフティ」で参戦する(発売は9月14日)。
「アサヒvsサッポロ」のターゲット層
ただ、アサヒとサッポロは微アル市場への考え方に違いがある。アサヒは、アルコールが苦手な人、もしくは飲めるけど少量にとどめる、いわゆる“ソバーキュリアス層”も含めて、これまで積極的にはお酒を飲まなかった人たちの取り込みに照準を置いている。
また、3月の「ビアリー」、6月の「ビアリー香るクラフト」に続き、9月には「ハイボリー」という微アルハイボール商品も投入予定と、アサヒは微アル戦略の連打という印象だ。
一方のサッポロは、「あくまでビール好きの人に飲んでいただきたいと考えており、あまりお酒を飲まない方に向けて積極的に歩み寄っていくことはしない」(野瀬裕之社長)と、アサヒのスタンスとは対照的に映る。
過去にも存在した微アルビール
そもそも微アルビールというジャンルは、遡ると過去にも存在した。
古くは、1986年に宝酒造から登場した「バービカン」(アルコール度数は0.1%)、2003年になるとキリンは「モルトスカッシュ」(同0.5%)、アサヒが「ポイントワン」(同0.1%)という商品を発売している。
両商品とも商業的にはあまり捗々しくなかったが、「当時とは需要が少し変わってはきたものの、微アルビールの市場定着は容易ではないと思っている」と、キリンの幹部は慎重な見立てだ。
2003年は道路交通法が改正され、飲酒運転の罰則が強化された年でもあり、当時はある意味、苦肉の策として微アルビールが誕生した側面がある。実際、その後2007年に道交法が再度改正され、さらに飲酒運転の罰則が重くなったのを受け、2009年に日本初のノンアルビールとして登場したのが「キリンフリー」だった。
そして現在──。ビールメーカーがWHO(世界保健機関)のアルコール規制強化機運に危機感を持っていたところへコロナ禍で健康意識の高まりも重なり、糖質ゼロビールや微アルビール市場形成の機が熟してきたともいえる。