野球評論家・張本勲氏への批判が相次いでいる。ことの発端は、8月8日の『サンデーモーニング』(TBS系)での発言だ。東京五輪のボクシング女子フェザー級で金メダルを獲得した入江聖奈について、張本氏は「女性でも殴り合い好きな人がいるんだね。見ててどうするのかな……嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技、好きな人がいるんだ。それにしても、金だから『あっぱれ』上げてください」と女子ボクシングを侮蔑するような言葉を並べた。
翌週15日放送の同番組では、フリーアナウンサーの唐橋ユミ氏が「先週のスポーツコーナーで張本勲さんのコメントの中に、女性及び、ボクシング競技を蔑視したと受け取られかねない部分があり、日本ボクシング連盟より抗議文が寄せられました。不快に思われた関係者の皆様、そして視聴者の皆様、大変申し訳ございませんでした」と頭を下げた。その後、張本氏は「今回は言い方を間違えて反省しています。以後気をつけます」と謝罪した。
『サンデーモーニング』の視聴者は基本的に50歳以上が多数を占め、40代以下はあまり見ていない。だが、今回の張本氏のコメントに関して、ネット上では50代より下の世代が多数声を上げている。つまり、普段『サンデーモーニング』を見ていないのに、批判している人も一定数いると考えられる。
もちろん、張本氏の発言は明らかに時代錯誤であり、アウトである。否定されて当然だ。ただ、視聴していない人たちが突然騒ぎ出して、『降板しろ』と言うのも違和感がある。
だが、これこそが“時代の流れ”なのだろう。テレビ局は番組を見ていない人にも気を遣わなければならなくなった。昨今、「どの局もコンプライアンスを気にし過ぎて似たような番組ばかりでつまらない」という批判があるが、そうせざるを得ない社会状況になっているのだ。
張本氏は冒頭の発言前、『週刊ベースボール』の連載でこう綴っていた。
〈私もマスコミの仕事をしているから、その中でいろいろと言われたり、書かれたりしているようだ。内容も想像はつくが、まったく気にならない。なぜならそれは個人的な意見でしかなく、個人が意見を言うのは自由だからだ。私は誰が何と言おうが、そんなものはまったく気にならないのだが、それを重く受け止めてしまう人もいるようだ。そんなものは気にするだけ時間のムダ。匿名での誹謗中傷ほど卑怯なものはないから放っておけばいいのだ。〉(2021年8月2日号)