今年6月に公表された厚労省の統計「令和2年社会医療診療行為別統計の概況」によると、65~74歳の12.9%、75歳以上では24.2%もの人が「7種類以上」の薬を処方されていた。こうした「多剤処方」が起きるのは歳をとるにつれて基礎疾患が増え、複数の医療機関に通う人が増えるからだ。それぞれの医師から処方された薬を飲むと、飲み合わせによって薬が効きすぎたり、効果を打ち消し合うリスクがある。年齢によっては、代謝が衰え、薬の副作用リスクが増すこともある。
どんな薬にも副作用などのリスクはつきものだ。医師と十分な相談のうえ、時には“減らす”“やめる”という選択が健康につながることもある。断薬を考える際、「かかりつけ医を変えずにできないか」と考える人は少ないだろう。そこで、今回は日本で唯一「薬やめる科」がある松田医院和漢堂の松田史彦院長から、「かかりつけ医に相談して断薬する方法」を指導してもらった。
松田医師は、減薬・断薬に対する基本的な考え方についてこう語る。
「必ずしも断薬がすべての患者に最善とは限りません。薬を飲むことで安心する人もいて、どうしても薬を飲まないことに不安を感じてしまう人にまで無理にやめさせるべきではない。重要なのは本人の意思で、“なぜ薬をやめたいのか”をまず考えることです」
減薬・断薬を目指す患者の多くが、理由として多剤併用による体調不良を挙げる。前述の通り、75歳以上の4人に1人が7種類以上の薬を服用している。かかりつけ医に相談する前に自宅でできる準備がある。
「体調不良は本人が気づかないケースもあるので、家族にも聞いたほうがいい。薬の添付文書に書かれている副作用はわかりにくく書かれていることも多いので、インターネットで調べて思い当たる症状がないか確認すると、より安全でしょう。同時に、似た効果の薬が複数処方されていないかも確認しましょう」
ただ、自己判断での断薬は厳禁だ。数値が悪化するだけでなく、震えや不眠など離脱症状が生じる薬もある。
「『薬をやめたいと言ったら、先生が嫌な顔するのでは』と遠慮が生じやすいが、そういう人は家族に付き添ってもらうといい。断薬の意思だけでなく、処方と異なる飲み方をしているなど家族しか気づかないことも伝えられます。そもそも今は医薬分業で、医師は薬を多く出したからといって儲かるわけではないので、遠慮する必要はありません」