韓国に駐留する米軍と韓国軍の合同軍事演習が8月10日から始まったが、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記はその前日の9日、朝鮮人民軍の戦略軍に対して、「いつでもミサイルなどを試射できるように準備せよ」と指示していたことが明らかになった。戦略軍は各種弾道ミサイルを担当する特殊部隊であり、一部の朝鮮問題専門家は「北朝鮮が大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルなどの戦略兵器を発射することで、重大な安全保障上の危機を引き起こす可能性がある」と懸念している。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
今回の米韓合同軍事演習については、金総書記の妹、金与正党副部長が1日、演習を憂慮する談話を発表。与正氏が南北通信回線回復に関連して、米韓合同軍事演習に触れて、「北南(南北)首脳の意志を甚だしく毀損させ、北南関係の前途を一層曇らせる、好ましくない前奏曲」などと述べて、軍事演習を中止するよう求めていた。
しかし、演習が10日から始まったことで、与正氏は談話を発表し、「南朝鮮(韓国)当局者の背信的な振る舞いに強い遺憾の意を表す」と非難。米国に対しては「米政権が言う『外交的関与』と『前提条件のない対話』は侵略的な本心を隠すための偽善にすぎない」と強く批判するとともに、「絶対的な封じ込め能力を強化する」と強調した。
軍の上将の階級を持つ金英哲党統一戦線部長も朝鮮中央通信を通し、韓国の行動は重大な安全保障上の危機を招く恐れがあると警告を発するとともに「南朝鮮は南北関係改善の機会を逃し、北朝鮮側の善意に敵対行動で応じている。高い代償を覚悟させる必要がある」と主張した。
これに先立ち、米国務省の報道官は9日、「10日から事前演習を開始し、16日から26日まで本演習を実施する」としたうえで、演習は「純粋に防衛目的」で、北朝鮮への「敵対的な意図」はないと強調していた。