多くの日本人が幼い頃から慣れ親しんでいるカレー。誰もが“思い出のカレー”や“人生最高のカレー”にひとつやふたつを持っているのではないだろうか。相撲やプロレスに造詣が深い脚本家・作家の内館牧子さんが、“最高のカレー”について明かす。
「昭和55年くらいのことです。プロレスの試合を見るために横浜の文化体育館に行ったときです。裏庭でしゃがみ、カレーをかっこむレスラー達を見ました。大盛ご飯が見えないほどカレーがかかり、ショベルカーが動いているような力強い食べ方。それは決して下品ではなく、美しいものでした。立ち上がったレスラーの一人は指についたカレーをなめた。“男”を見たと思いました。あれほどの“カレーシーン”とはいまもって出会えません」
体育館裏のカレーの正体とは
横浜文化体育館の記録から当時のプロレス興行を調べると、昭和53年に新日本プロレスの試合があったと判明。新日本の棚橋選手に聞くと、当時のレスラーが食べていたかはわからないが、道場のまかないカレーが昔からあるという。
そこで、鍛え抜かれた肉体で、「IWGPヘビー級王座」の最多戴冠記録を樹立。ドラマや映画などでも活躍する、新日本プロレスの棚橋弘至さんに話を聞いた。
「道場の食事は基本的にちゃんこ鍋ですが、たまに大鍋でカレーが出るとみんな喜んで、すぐになくなるほどです。また、ぼくがIWGPヘビー級王座を11回連続で防衛したときも、試合前は必ずカレーでしたね。カレーは、勝負飯であり、ごほうび飯なんです」
※女性セブン2021年9月2日号