誰でも間違いは起こすものだし、失敗を挽回するチャンスもあってよいと思う。だが、その失敗が組織の体質から生まれている疑いが持たれているなら、通り一遍の謝罪では不信感を募らせるだけだろう。緊急事態宣言下で夜通しの宴会をしたあげく大ケガを負い、救急車が出動したテレビ番組スタッフたちによる騒動をきっかけに、自粛を呼びかける一方で働く人たちのコロナ対策意識が捻れている現実について、ライターの宮添優氏がレポートする。
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東京五輪の番組を担当したテレビ朝日社員や外部スタッフらが、閉会式があった8月8日夜から9日未明にかけて複数人で飲酒などをして、女性一人が怪我を負い救急搬送された騒動。緊急事態宣言下であり、視聴者に「自粛」を促す番組を放送していながら、テレビ局スタッフの極めて甘い認識に猛批判が集まっている。ところが「警察沙汰になったから報じられただけ」と吐き捨てるのは、在京キー局の人事部担当社員(40代)だ。
「テレ朝だけではありません。どの局でも、怪我人までは出していませんが、少なくない社員やスタッフたちが、打ち合わせなどと称してこっそり飲みに出かけています。テレ朝スタッフは普通に営業している店で、朝までカラオケを楽しんでいましたが、テレビ局員向けにこっそり開けているお店もあるほどです」(在京キー局人事担当社員)
在京キー局ともなれば、本社には数千人規模の社員やスタッフが常駐し、近隣の飲食店、居酒屋にとっては太い太い「お得意様」となる。コロナ前に「テレビ局頼み」だった飲食店も休業や時短営業に追い込まれていたが、細々と、そして今もこっそり営業を続けている。それは、やはりこっそり酒を飲みにやってくるテレビ局関係者を迎えるためであるという。複数の在京キー局が本社を構える、東京・港区内の居酒屋店主(60代)が声を潜める。
「同じビルのフロアにあるスナックには、今も某局の社員や新聞記者が通っています。取材対象者との会合や、テレ朝のように、オリンピック担当者が打ち上げで来ているのを目撃したこともあります」(居酒屋店主)
在京キー局に出入りする制作会社スタッフ(30代)が、テレビ局のダブルスタンダードについて憤慨しつつ打ち明ける。
「テレビは盛んに自粛だ、外に出るなと言っていますが、テレビ局の中はスタッフで溢れています。出社する人数を減らす、会議はリモートで、などのかけ声がかけられていますが、実際にはリモートにならない打ち合わせや会議があって、そこはいつも密状態だし、狭い室内でゲラゲラ声を上げ、仕事の話をしながらランチを取っています」(制作会社スタッフ)
さらに、特に頻繁に出入りしているキー局では、前代未聞の事態が発生しているとも説明する。
「そんな状態だから、スタッフの感染防止に対する意識も希薄で、某番組の若いスタッフが複数人で丸一日飲み明かしたらしく、それで全員がコロナに感染。濃厚接触者が続出し、番組制作に支障が出るほどだったそうですが、表沙汰にはなっていません。別の局のあるフロアでも、防護服姿の人たちが座席の消毒作業をやっていて、また(感染者が)出たか、とため息をつきつつも、密な状態で仕事を続けている」(制作会社スタッフ)