『SR サイタマノラッパー』シリーズでも知られる入江悠監督による、10年ぶりの自主映画『シュシュシュの娘(こ)』が8月21日に公開された。全国のミニシアターを支援するために立ち上がった入江監督と、同作で主演を務める女優・福田沙紀に、自主映画への思いや見どころなどを訊いた。
昨年6月、未曾有のコロナ禍により映画業界が苦境に立たされていることを受けて、新作自主映画の製作を発表した入江監督。出演者は有名無名を問わず公募で集め、2500人を超える応募の中から福田沙紀が主演に抜擢。スタッフも入江監督自らSNS等を通じて募集し、最終的には将来の映画界を担うであろう学生ボランティアも多数集結した。
映画の製作資金は入江監督自身が負担したほか、クラウドファンディングも実施。その際、3つの目標として入江監督は「コロナ禍で苦境にある全国のミニシアターで本作を公開すること」「コロナ禍で仕事を失ったスタッフ・俳優と、商業映画では製作できない映画を作ること」「未来を担う若い学生たちと新たな日本映画を完成させること」を掲げた。
昨年公開された『AI崩壊』をはじめ、近年は商業映画の世界でも活躍している入江監督。だがクラウドファンディングの際に寄せたメッセージでは「徐々に日本のメジャーの限界も見えてくるようになりました(中略)それらを破壊し、自由な創作の場を取り戻したい」とも語っていた。具体的にどのような“限界”を感じていたのだろうか。
「何億円もの規模の大作商業映画でも、意外と現場のスタッフはお金がなかったりするんですよ。いくら予算を調整したところでハリウッド映画と比べたら規模が小さいというのもあります。なので“限られた予算の中でいかに戦うか”と考えると、自主映画とあまり変わらないなと思ったんですね。
例えばカーアクションのシーンで『車は何台以内』と決められていたり、『撮影は何日以内で終えないと厳しい』と言われたり。自主映画と似たような問題に直面することが多々あるので、“メジャーだから予算を自由に使って何にでもチャレンジできる”というのは幻想だなと」(入江監督)