5月の放送開始以来、梅雨時の大雨や真夏の豪雨、パラスポーツがテーマになるなど、現実とのタイムリーな“シンクロ”が話題のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』。宮城県気仙沼湾沖の島に生まれ育った主人公が、気象予報士となった後、東京で就職して奮闘する姿が描かれている。メディア研究が専門のジャーナリスト・水島宏明氏(上智大学文学部新聞学科教授)は、放送を終えたばかりの第14週「離れられないもの」(第66〜70回、8月16〜21日放送)が、毎年のように自然災害が相次ぐ日本社会に重要な問いかけを発している、と指摘する。
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朝ドラ『おかえりモネ』。気象予報士になった主人公・永浦百音(清原果耶)は働き始めた気象予報の会社でテレビ番組の気象予報コーナーを手伝っていた。第14週では、このチームの中心、気象キャスターの朝岡覚(西島秀俊)が心の中でずっとひっかかっていた葛藤が明かされる。
それは8年前に起きた明岩市石音町(実在しない自治体の町名)で起きた記録的な大雨被害の報道だった。朝岡は緊急報道で被害が局地的なものと見て、「深夜の移動は危険。自宅の2階などへの待避」を呼びかけたが、実際には集落全体が埋まる大規模な土石流が発生し、死者まで出る大災害になった。
そのときの苦い経験や毎年のように同じ土地で繰り返される災害から、朝岡は「そんな土地にとどまることはない。離れればいい」と地元の人たちに伝えるようになった。だが果たしてそれでいいのかと自問自答を繰り返す。視聴者にとっては8月に各地で豪雨災害が起きるなかで朝ドラと現実がシンクロし、朝岡の葛藤には格別に重い意味があった。
現実と重なり合う朝岡の問い
朝岡が抱えてきた“心の闇”。それは8年前の大規模土砂災害のトラウマだった。
百音がテレビ局の朝番組で気象予報チームの仕事に慣れてきた頃、明岩市石音町で再び大規模な土石流が発生する。朝岡らも緊急報道で注意を呼びかけた。幸い、住民たちは避難して全員が無事だった。以下の報道フロアでのミーティングの場面が近年の気象予報の難しさを物語っていた。